雀明華「スタンド・バイ・ミー」
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15:名無しNIPPER[sage]
2017/06/14(水) 11:37:48.58 ID:ZDD1pdCd0
「申し訳ありませんがーーこの置物はただの古い置物。それ以上の価値を見出せません」

ハオは凛とした声で告げます

「だからーーーーーー買い取れません」

私は首を傾げます

殺人事件を記した手帳を手元に置いておくくらいなのですから、曰く付きの聖女像も買い取りそうなものですが。なんなら私が欲しいくらいです

「曰く付きの品物とかに興味ないアルカ?」

「いえ、その置物は、ただの人間の少女が渡したものです。当然、天女のものではありません」

ハオはピシャリ。と鉄扇を彼の鼻面に突きつけます。もしあと数センチズレてたら鼻の骨が砕けていたでしょう

「……私の話が作り話と言いたいアルか」

「さういうわけではありません。脚色はあるでしょうが、概ねあなたの身に起こった話は信じています」

ハオは鉄扇をキセルのように口元に持ってきます

「ただ、その上で、これにはなんら価値が無い、と言っているのです。これから説明しましょう」

まるで推理を披露する探偵のように間を持たせるハオ

「肌が白くほっそとした顎。華奢な手足。確かに子供の視点から見て思い出も美化されれば、それはこの世ならざる絶世の美少女でしょう」

しかし。とハオは断ります

「恐らくそれは……家に監禁され、碌に食べ物も与えられなかったからだと思います」

まさかの推理に私はあんぐりと口を開けます

絶世の美少女のカラクリは、たんなる欠食児童だったのですから

「親に虐待されていたのか、親元から売り飛ばされたかのどちらかでしょうね」

淡々とした冷徹な推理

しかし、これで家に少女の痕跡がないのも頷けます

まともな人間の扱いされていなかったのですから。当然服などの私物も与えられていなかったでしょう

「けれど、この方が出会ったのは家の外ですよ?監禁されてないじゃないですか」

私は的を射た反論をします。伊達にピエールのファンはやってません

「いえ……その時ばかりは状況が違ったのです」

的外れだよワトソン君。と言いたげなハオ

「恐らくその時、彼女を監禁していた人物は殺害されていたんです。恐らく、その少女本人に」

今度こそ顎の骨が外れるほどあんぐりと口を開けてしまいました

「だからこそ、彼女は外に出たんでしょう。池で手を洗っていたのは、返り血を洗っていたんです。あなたを見て動揺したのも、当然一目惚れへではなく、殺人事件を起こした直後だったからです」

にべもなく初恋の思い出を粉砕するハオ

チラチラ見ていたのは、あなたを口封じするチャンスをうかがっていたからでしょう。と付け加えます

しかし彼は動揺した様子を見せず、無言でハオの推理に聞き入っています。何事にも動じないという彼の弁は本当のようです

「そして……その凶器こそが、この聖女の像です。殴り殺した凶器を隠すために、恋惚けた少年にこれを渡して逃げ出したんでしょうね」

鈍器のような凶器が見つからなければ、事件に追われて手一杯の警察は、豆腐の角に頭をぶつけたようななんらかの事故死として扱うでしょうから。と香港のホームズは推理を続けます、そういえばホームズはイギリス人ですから、香港とまったく関係がないわけではありません

「けれど、そんな事をするよりもそのまま自分で持ち去った方が手っ取り早いんじゃないですか?」

誰かに託す方がよほど危険な気がします

「その少女の身にもなってください。当時のやつれた少女の身では、この置物を持ち歩くには辛過ぎます」

確かに、これはなかなか重いです。重い想い出です

「かと言って家の中に置いてたり、近場に捨てたりすれば、すぐにバレます。だから一か八か、彼に渡したんでしょう」




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