文香「文学少女は純情だと思っていましたか?」
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5:名無しNIPPER[saga]
2017/06/22(木) 19:05:31.42 ID:gkofDq5s0



「改めて……鷺沢文香と申します。よろしくお願いします」

 お茶と言うから何処かの喫茶店に入るのかと思ったら、まさかの彼女の家にお迎えされた。
 家と言っても彼女の叔父が経営している古書店で、そのレジの机を挟んでの会話だけれど。
 とても落ち着いた感じの古書店は、彼女の姿ととてもマッチして映える。
 もちろん僕も本は大好きだから、テンションなんて上がらないわけがない。

 軽い自己紹介をして分かった事が幾つかある。
 彼女の名前は鷺沢文香、現在19歳。
 なんと、現役のアイドルらしい。
 確かに見目はとても麗しいけれど、この会話のテンポとテンションでやっていけるものなんだろうか。

 そして、もう一つ。
 鷺沢さんは彼女を担当しているプロデューサーに、恋をしているという事。
 そんな事を僕に伝えて良いのかと聞いたら、なんとなく貴方なら大丈夫な気がする、と言われた。
 危機管理能力のプロデュースが行き届いてませんよ、名前も知らぬプロデューサーさん。

 まぁ僕自身はそれを知ってどうこうしようと言うつもりは微塵もない。
 強いて言えば僕の恋愛は自己紹介と同時に終わったくらいだ。
 なんと言えば良いんだろうか、終わっておいて正解な気がしてくる。

「それで……その、私はあまり友好関係が広い方ではなくて……悩みを打ち明ける相手と言うものが……」

「なるほど、相談相手が欲しいっていうよりも、取り敢えず話す相手が欲しいって感じかな」

「初対面で申し訳ありません……ですが、貴方なら信頼出来る気がするので……」

「ちなみに、理由は?」

「貴方も、本が好きそうでしたから……」

 世の中の文学少女を狙っている男達よ、本を読め。
 とまぁふざけた考えは一旦置いておいて、僕の役割は話し相手と言う事だ。
 その対価として、この店の本は何時でも好きな時に貸してくれるらしい。
 話を聞くだけで、あまり普通の書店には置いてない本を読めて、尚且つこんなに綺麗な女性と話す事が出来るなんて役得以外の何でもない。



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