【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:43:36.89 ID:+eTeNEs7O
5.

晩夏。
八月も終わろうか、というのに、いまだしぶとい暑さが忌々しくしがみついてくる。空調に頼れない外での体力仕事は本当に参る。作業中は皮まで脱ぎたくなるほどだ。

日が暮れると多少はマシになるが、そもそも暮れるまでが遅い。
夏場にこそ早く日は沈むべきだ、なんて通るはずもない意味のわからないことを思ってしまう。

そんな時期でも元気な人は元気で、その違いはどこにあるのかと考えて悲しくなった。
元気なのは彼女を代表とする若い面子。歳か。

「ねえ親方ー、今日の仕事はいつ終わるんー?」

猫車を押す彼女から、すれ違いざまにおどけたイヤミっぽい声が飛んでくる。
現場には出てこない上司からの無茶振りのせいで、このところ残業を頼む日が続いていた。耳が痛い。

もう少し頑張ってくれ、と何度目かわからない曖昧な応えを返した。

「あ、親方。通行人がダンプどけてくれって。そろそろ人も増えるし持ってっていいスか?」

タオルをハチマキのように頭に巻いた同僚の提案を承諾して頼んだ。
ポケットに突っ込んでいた安物の腕時計を探る。まだ日は高いが、時間はもうじき午後六時。今日も少し残ってもらわなければならないな、と頭まで痛くなりそうだった。

唸りながら走っていく大型車のあとを目で追う。道路には楽しそうに笑っている浴衣姿のカップルが見えた。羨ましいことだ。

暑いのはまだ当面変わりそうもないが、暦上は既に納涼を訴え始める時期。その日は、地域の自治体によって花火大会が企画されていた。

「寄ってってやー! タコ焼き、ウチは安いし、味もあの有名アイドルのお墨付きや! 暑い時こそ熱いもんやでぇ!」

呼び込みの声が聞こえる。道路脇には屋台も並び、混み合いと賑わいは結構なものだった。道ゆく人の邪魔そうな目や、こんな時にまで仕事を、という同情の目が辛い。


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