【モバマス】P「土をかぶったプリンセス」
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32:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:58:26.87 ID:+eTeNEs7O

後日、勤務時間中にわかりやすく沈んでいる男を見つけた。事情を知らない周りは腹でも壊したのかと心配していたが、知っている身としてはなんて露骨な、とまた少し呆れる。

仕事上がりにひっ捕まえて、そのまま近場の呑み屋へと拉致した。幸いその彼は二十歳を超えていた。

適当に酔い潰すと、良い具合に抱えているモノを吐き出し始めた。

「……あんなんさぁ、惚れんなって方が無理だろ。なあ親方、わかるっしょ?
だってさ、もーズルイじゃん。見た目ギャルなのに根は真面目なイイ子とかさ、反則じゃん。みんな好きじゃん。しかも分け隔てとかしねーでガンガン距離も詰めてくるしさあ。自分が可愛いのわかってんのあいつ。
なあ親方聞いてる? なあって」

聞いているか、と問われれば、聞いていない。
けれど、ああ、そうだな、違いない、わかるよ、と相槌をひたすらに打ち続けた。
もう辞めたい、という言葉は出なかったことに安堵した。辞めてしまったなら、彼女はきっと、と思ったから。

吐き出すだけ吐き出したのが良かったのか、彼女の切り方がさっぱり鮮やかだったからか、帰る段になると彼の顔つきは少しだけマシになった。その足取りに反して。
飲ませ過ぎたかもしれないな、と反省した。家まで責任を持って送り届けることになってしまった。

その翌々日、彼と彼女の出勤時間が被った。
どことなくぎこちない二人だったが、まあそれも僅かなものだ。あとは時間が解決してくれることだろう。


その二人を見て、大きなため息を吐いた。意味はおおむね安堵だ。
まったく、こういう面倒ごとは勘弁してもらいたいものだ。彼の気持ちもわかるが。

……気持ちは、わかってしまうのだが。


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