4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:09:10.47 ID:+jykf0ly0
2.
翌日、やってきた彼女はおおむね写真から得られるイメージ通りの子だった。裏地がヒョウ柄の黒パーカーに、下はブルーのショートデニム。若者の洒落には詳しくないが、可愛らしいカジュアルスタイルだと思った。ジャージやスウェット、作業服ままで平気で出勤してくる男とは違う。
彼女は出会い頭、無邪気な声で言った。
「ちょりーっす! 今日からお世話になりまーす。よろしくちゃーん親方っ☆」
敬語の下手な子だった。だけど、それを不快には感じなかった。敬語の使えない新人が入ってくることは珍しくもなかったから、おそらく慣れもあったんだろう。
よろしく、と返した。
親方という呼ばれ方がなんとなくむず痒かったから、周りと同様に監督と呼ぶよう言った。
「えー? でもでもー、カントクよりは親方のがカッコいいぢゃん! ダメなん?」
そんなところでゴネられるとは思っていなかった。
まあ監督だろうが親方だろうがこの現場で指すのは現場監督である自分以外にいないか。むず痒さは我慢しよう。
構わない、と告げた。
「いぇーい☆ おーやかたっ!」
嬉しそうに呼ぶ彼女をどうしていいかわからず、頭をかいた。うちは土建屋だ、しんどいぞと脅すようなことを言ってみた。
「体力には自信あるし! ヘーキっしょ!」
楽観的だな、と思った。この笑顔がどれぐらいで曇るだろうと意地の悪いことが頭をよぎった。入ってから数週は、みな死体のような顔色で帰っていく。自分もそうだった。
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