5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/15(土) 20:09:46.30 ID:+jykf0ly0
ツナギへの着替えを仮設小屋で済ませてもらった。
いざ仕事を始めるにあたって、新人研修を誰が務めるのかで少しばかり現場が揉めた。
彼女は久しぶりに入ってきた女性の新人だった。髪型や濃いめのメイクのせいでアイドルやモデルのような一般的な可愛さからは離れていたが、顔立ちは愛らしかった。どうもそのあたりが原因らしい。
適当な若い男衆に任せるつもりだったが、そうすると他から文句が生まれる。それならばと熟練のベテランをあてがおうとすると、そんな面倒なこと若いのに任せろと拒否された。
一番丸く収まる手を考え、結果やむをえず自分自ら研修に当たることにした。
彼女は華奢な体格だった。力仕事は向きそうもない。しかし、基本的に体力勝負の仕事ばかりなウチの職場ではやってもらうしかない。
初日は、単純で、比較的楽な部類に入る土砂の運搬を教えた。重機で掘り返した地面の土をシャベルで猫車に移し、運搬用のトラックへ運ぶ。それをひたすらに繰り返すだけ。
大丈夫か、と確認すると、
「えっ、ねーねー親方、これねこぐるまって言うん? マジ?」
一輪式の手押し車を見つめながら、そんな的外れな問いが返ってきた。
そうだ、と応えた。
「なにそれ超ウケる! めちゃカワじゃん、ヤバたん!」
えらくご機嫌に、彼女ははしゃいだ。
なんとも新鮮に感じた。そんなくだらないことに、よくそうも心を振れさせられるものだと。
そういう感覚は大切にすべきなのかもしれない。ただ、仕事はしてもらわないと困る。
「……あっ、申し訳ー。やるやる、ちゃんとやるぽよ!」
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