【デレマス】あやめ「バックストリート・ニンジャ・パフォーマンス」
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33:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:44:27.46 ID:0Mcrdfm2o
 残虐な急所攻撃が来ないことを見切った悪徳は、多少のダメージと引き換えに強引に攻撃を当てていく! 一方のあやめは体格差から一発でも拳を喰らえば動きが止まるのは必至! さすればたちまちに両者の間に吹き荒れる空手台風に巻き込まれることになるだろう! 故にあやめは全神経を集中し、直撃を避けながら的確に細かいカウンターを仕掛けていった。どちらも消耗戦。決着はほんの数瞬後に訪れるだろう。だが……(何だ、何だこれは!)



34:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:44:59.75 ID:0Mcrdfm2o
 悪徳の違和感が最高潮に達する。自身の空手のキレは良い、過去最高だ。だが、良すぎる。脳から分泌された興奮物質が全身を駆け巡り、空手を通じて昇華していくこの心地良さ! 高揚! 寂れた路地裏に響き渡る、打撃音、気合の一声、衣擦れ、雨の水滴がビートボックスPVめいて彼らの周囲を雄弁に彩る! まるでライブだ! 空手のライブ・ミュージック!


35:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:45:38.37 ID:0Mcrdfm2o
 しかし、このライブの主役は自分ではない。悪徳にはそれが分かってしまう。分からされてしまう。故に、この舞踏に付き合うのは危険だ! だが悪徳の身体と思考は既にぷつりと途切れされている。幼児の手を離れて飛び立つ風船めいて、悪徳は上空から自らの顛末を眺めた。音楽はサビを経て、クライマックスへ! ここで、ここで彼が一打逆転の大振りを狙えば、そこに──(やめろ、やめろぉ!!)音楽は、あやめは悪徳の抵抗を拒否する! 「イイイヤアアアーッ!!!」


36:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:46:33.98 ID:0Mcrdfm2o
 天を上る龍の如き電光石火のカウンターが、悪徳の顎を貫いた! 世界が白く爆ぜ飛び、散る! 最早声を上げることも出来ず悪徳は地に崩れ落ちた。深く沈みゆく意識に、雨音だけが染みて、それも消える。


37:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:47:08.93 ID:0Mcrdfm2o
「あの、大丈夫ですか?」 体が揺さぶられる感覚。遅れて視覚と聴覚がぼんやりとだが戻ってくる。仰向けにされた視界は、まず東京の曇天を、次にあどけなくこちらを覗き込む少女の姿を捉えた。少女の着ている服は、まるで冗談めいたニンジャ装束。そうだ、自分は彼女と……「グッド、あやめ。良い画が撮れましたよ」人間の気配が唐突に増えた。それも複数。


38:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:47:46.94 ID:0Mcrdfm2o
「師父! あ、いや、プロデューサー殿! それは真ですか!」「ええ、非常に美しいニンジャアイドル空手でした。事前に伝えられていた要件も十分こなせていましたよ。あまりに殺意が高すぎても、ファンは引いてしまいますから。適度な塩梅でした」「へへっ……! 良かった……」 あやめはにへらと笑った。年相応の、柔らかな笑顔だった。


39:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:48:24.25 ID:0Mcrdfm2o
 プロデューサーと呼ばれた男はスーツ姿に黒縁の眼鏡をかけ、鋭い刀めいた雰囲気を纏っていた。それ以外にも、撮影用の機材を抱えた男たちが、狭い路地の四方の闇からぬらりと現れた。悪徳は状況を把握しようとするが、未だに思考は判然とせず要領は得ない。ただ、自分が『してやられた』事実だけは理解できる。


40:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:48:56.73 ID:0Mcrdfm2o
「喋れますか。喋れませんか。では軽い説明だけ」あやめはやや離れてカメラマンと撮れた映像を確認している。「あなたの行動は、あなたが社内に侵入した時点で把握していました。普段でしたら侵入してきた時点でアウトでしたが……今回はこういった形で」プロデューサーはあやめをちらと見た。


41:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:49:27.57 ID:0Mcrdfm2o
「新人です。浜口あやめ。ニンジャアイドル。素材は満点。方向性は……ま、そこは私の腕の見せ所ですかね。デビューMVはそこそこViewを稼げるでしょう、あなたのおかげです」悪徳は不服を咳き込みで応えた。


42:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:50:05.07 ID:0Mcrdfm2o
「あやめ!」「はい!」「インファイトでのアクション撮影はオールオーケーです。また連絡しますが今度は苦無等を用いたアウトレンジでのアクションシーンを撮る予定です。しっかりレッスンしておくように」「は、はい!」「合わせてレコーディングもいい加減完成させますよ。いいですね」「は、はい〜……」「では、後ほど」


43:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:50:45.48 ID:0Mcrdfm2o
 あやめは撮影スタッフと共に、風切音を残して消えた。残るは男二人のみ。「しかし……」プロデューサーは悪徳のカメラを手に取り、中のデータを改めて確認する。「こんなものでスキャンダルになるとは、やはりどうかしている」「げふっ……へっ、世間は、ファンには、それで十分なのさ……」


44:名無しNIPPER[sage]
2017/07/15(土) 23:51:37.40 ID:0Mcrdfm2o
 データには、プロダクション所属アイドルとサラリーマン、背景が社内であることを考えれば仕事上の関係者だと容易に想像がつく二人が、“二人きり”であるかのように切り取られた写真が収められていた。「もう舌が回りますか」「こんな……瞬間でさえ今じゃ誰も隙を見せねえ。それこそ内部でないとな……お前の意見に同意するぜ……どうかしてるよ。これを、少し加工するだけで発狂する野郎共はな」プロデューサーは鼻を鳴らした。


45:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:52:07.70 ID:0Mcrdfm2o
「アイドルの処女性……アンドロイド……」悪徳は、ここに逃げ込む前に見かけたARホログラムを思い出した。「転換点はもう、来てるのかもな……俺もお前も」プロデューサーは応えない。彼は踵を返した。「おい」振り返る。


46:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:52:38.04 ID:0Mcrdfm2o
「出演料、寄越しやがれ」プロデューサーはため息をついた。「あなたの今回のクライアントは既に抑えてあります。失敗のペナルティは、ありませんよ。それで手を打ってください」「はん……」それ以上悪態をつく気力も悪徳には残っていない。「では」プロデューサーは後ろ手に何かを投げて寄越し、消えた。


47:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:53:07.36 ID:0Mcrdfm2o
 それは一枚の販促用ホログラムカードだった。悪徳の顔の横で、浮かび上がった手のひらサイズのあやめが、一定周期でニンジャ空手演舞を繰り返している。彼女の周りをデビュー曲の曲名と発売日がくるくると回っている。


48:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:53:40.50 ID:0Mcrdfm2o
 アイドル……プロデュース……ニンジャアイドル『あやめ』がこの時代にはたしてどれだけの成功を収められるか、悪徳にはその可能性など測りようもない。たとえ体術に、空手に長けていようとも、それが業界の荒波にどれだけ役に立つものか。だが、あの空手乱舞で感じた熱は、まだ悪徳の体内に燻り続けいている。


49:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:54:14.22 ID:0Mcrdfm2o
「馬鹿馬鹿しい……どうかしてるぜ……」自分が撮ってきたスキャンダルによって潰された少女たち。未来、可能性。「どっちにしろ、女の性を商売にかけることにゃ、変わりねえよ……」それは独り言ちて、ただ自分への言い訳めいて誰に届くでもなく中空に消えた。



50:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:54:47.01 ID:0Mcrdfm2o
 雨は未だ、彼と東京を覆っていた。


51:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 23:55:15.23 ID:0Mcrdfm2o
以上になります。ありがとうございました。


52:名無しNIPPER[sage]
2017/07/15(土) 23:56:26.76 ID:Crp9ezXmo
ドーモ、〜=サンはテンプレなので外して欲しくなかった

それ以外は悪くない


53:名無しNIPPER[sage]
2017/07/16(日) 01:54:10.95 ID:9FlqI/lx0
忍殺語を徹底して排しながら、あやめ殿で忍殺を書くと技前がある。


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