ある門番たちの日常のようです
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18: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/08/09(水) 23:24:23.41 ID:JoA81wv70
少し大袈裟に囃し立てる鈴谷を呆れた風で、しかしまんざらでも無い様子でいなしながら仕事へと取りかかり始める加賀。
まるで仲の良い姉妹か十年来の友人のように気心の知れたやりとりを交わす2人を横目に、俺の視線は再び机の上に積もる紙の山へと戻っていた。

胸の内に渦巻く暗い気持ちは、単に一向に片付かない仕事に絶望していた先程までのものと少し毛並みが違う。

「…………」

手にとって開いた資料の一冊。世界の………もう少し厳密に言うならヨーロッパの「大変な情況」を記したそれのページを捲っていく。

(………酷い有様だな)

ほんの少し紙上に視線を滑らせるだけで、次々と目に入ってくる惨状、悲報、そして東欧連合軍の苦境を示す数々の文章。陥落、敗退、壊滅といった陰気な単語がそこかしこに並び、死者や負傷者を示す数字は3桁で済んでいれば奇跡と言っていいほど常に大きい。ヨーロッパ全体を撮した地図は、中央のフランスとドイツに跨がる地域の広い範囲とスウェーデン、フィンランドの一部が黒く塗りつぶされている。

リスボン沖事変、その後に激増した小規模な襲撃、そして今回の北欧大規模強襲。

たった一ヶ月で、欧州方面における戦況は激変した。

ドイツとフランスは保有艦娘の九割を失い首都を追われた。ルクセンブルク、ベルギー、デンマークは国土全域と通信が途絶し、奇跡的にアムステルダムとの通信が回復したオランダも戦況は絶望的で風前の灯火だ。スウェーデンとノルウェーにも深海棲艦が上陸し、フィンランド等を加えた北欧連合軍もじりじりと後退を繰り返している。

経済面での損失は天文学的な数値に昇り、在留邦人を含む犠牲者の数は二千万人を下らない。独ソ戦におけるナチス・ドイツ側の死傷者が1000万人強と言われているが、その倍以上の人間がたった2週間でヨーロッパの大地から消えた。

そして、ベルリンにおける戦いでの「軽巡棲姫の撃沈」と、直後に発生した深海棲艦の全体的な攻勢の鈍化がなければこの被害は更に甚大なものになっていたという。


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