女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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名無しNIPPER
[sage]
2017/08/13(日) 22:39:46.50 ID:/6Xwlc9Z0
「彼女が生きている間……まで」
「普通、こういう話には他人はでてこない」
男は驚いていた。そしてなにか見定めるようにこちらを見る。
「じゃあその彼女が死んだらどうするの?」
そんなもの……。
「君は死ぬのかい?」
諦めが心を満たす。そんな気がした。
誰が死のうと、結局人は生きていく。そして忘れる。それが現実だ。
「そんなものだよ。答えなんて」
だがそれでも。
「じゃあどうすればいい?」
受け入れるのは許容しがたい。
忘れたくない。失いたくない。だが取れる手段なんてない。
詰んでいる。終わっている。意味を失っている。
「消去法的選択というのがある」と男は言った。
例えば、君は武器を持った大量の敵によって崖に追い詰められている。崖の下は深く、底が見えない。でも君は飛び降りなければならないんだ。飛び降りるのがどんなに怖くても、敵の元に向かえば、絶対死ぬのだから、身を落とすという選択肢しかない。
さて、君は崖の上に立っているか?
「どうだろうか」
「僕は……」
彼女はそこまで大切だろうか?
要するに僕には藁にすがるという選択肢が残されている。だが失敗すれば全てを失う。成功しても全てを失う。あまりにも釣り合わない、愚か者の選択。大人にならなければならない。もう、いいかげんに。
『ずっと一緒にいようね』
それでも……感情が否定している。
泣きそうだった。もういい加減にしてほしかった。だって無理だ。前例だってない。前例をださないように、この都市は徹底している。
僕は崖に立っている。
「彼女は死なない」
「そっか」
男は優しく笑っていた。
もし他人の、第三者がいればきっと僕を否定する。
諦めたほうがいい。 だって仕方のないこと、、、、、、、、、、なんだから。
「世の中意外と何とかなるものだよ。世界には手段が溢れすぎているから。そして君には素養がある」
立ち去ろうとしているのが気配でわかる。
「最後に聞かせてほしいんだけど、もしその彼女が永遠に生き続けるなら、君も永遠に生き続ける?」
「うん」
「いい答えが聞けたよ。じゃあね」
違和感が消える。どこまでもいつも通りに。
世の中のルールは規則的に回り続ける。逆らうことは許されない。秩序を守るために。
枠外からはみ出ることを、愚か者と、世間一般は呼ぶ。
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