女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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13:名無しNIPPER[sage]
2017/08/13(日) 22:39:01.43 ID:/6Xwlc9Z0
「……なにものなんですか」

怖かった。未知との接触。知らないものへの邂逅。

「君の大切な人が死ぬんだろう? この都市の犠牲になって」
「なんで知って……」
「鎌をかけただけだよ。僕は人の死に敏感でね。人の心の在り方がわかるんだ。で、いろいろ考えて適当なことを言って、君から情報を引きずりだした」

……弄んでいるのか?
思わずそう思う。そんなことをしてなんになるのだろう。趣味の悪い暇つぶしか、なんなのか。それぐらいしか思いつくものがない。

「大切なひとが死んでいくのを、看取ったことがあるんだ。なにもできないまま」と彼は言う。
淡々とした言葉だった。つとめて感情を出さないようにしているような、そんなような。
もしかして善意なんだろうか、と考える。
思わず感情が揺れた。彼の言葉はやけに真実味があるような気がした。
死に敏感だという言ったこと。大切なひとが死んでいくのを看取ったということ。

「ところで君に聞きたいことがあるんだけど」

目が合う。吸い込まれるような黒い瞳。

「君はどれぐらい生きたていたい?」

瞬間、身動きが取れなくなった。人ごみの中でとまっているのに誰も気に留めない。異様な状況。
催眠術めいた、魔法のような。どこまでも追いかけてくるような感覚。まともじゃない。そういうものを無理やり引きずりだされている。なぜだか正直なことを話したほうがいい気がした。彼の言葉は、不思議な引力を携えていた。

「ぼくは」と呟く。

たった一つの目標のために生きているのかもしれない。
愚かしいけれども、確かにそれは僕を占める重要な部分であったのは確かだ。

「ぼくは」

それでも感情は犠牲にしなければ。仕方のないことなのだ。犠牲とは、必要なものだ
こみ上げてくるものがあった。自分の奥深くからくる、理屈ではない感情。



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