女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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2:名無しNIPPER[sage]
2017/08/13(日) 18:14:02.04 ID:/6Xwlc9Z0

『我々の命は常に犠牲の上に成り立っている。我々が住むのは犠牲の都市だ』
人が一人を犠牲にし、ようやく自分たちは生きていられる。それを忘れないための、自戒の言葉。
それは頭に浮かんだ最初の言葉だった。とても、信じられなかった。
「……どういうことですか」
「私たちの娘が、犠牲者として選ばれた」
彼女は忽然と姿を消した。僕の日常から、なんの前兆もなしに。
彼女の両親の表情に、いつもの穏やかさと言ったものはない。それが否が応にも、真実なのだと知らしめた。
「一年前からだ。緑の矢が、私たちの娘には立っていた」
緑とは、命を表す色。緑の矢がたてられた者はその身を捧げなければならない。
『星堕ち』という出来事で人類が滅んで以来、人は魔法という能力を手に入れた。大抵の人は炎やら氷やらを生み出すことができる。しかし、体力の消耗と生み出されるわずかな奇跡は、結果として釣り合っていない。犠牲に選ばれるのは、決まって魔翌力が高い者だ。魔法とは、ただただ犠牲のための身に存在する。……一般的には、何の意味もない奇跡。
「……嘘ですよね?」
呆然とつぶやく。言葉が宙にうく。否定してくれと、誘うみたいに。だがそれは、ひらひらと落ちていく。
認めたくなくて、さらに言葉を紡ぐ。
「緑の矢がたてられるほど……魔翌力は高くなかったはずですよね?」
「……」
沈黙が続く。


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