女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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31:名無しNIPPER[sage]
2017/08/15(火) 22:28:10.36 ID:7t/DizBJ0
「結局、意味なんて自分で決めるしかないんだ。心の奥底では、誰だって気づいてる。神様は意味があって人を生んだんじゃない。理不尽な現象が存在するのがその証拠だ。迷路の話、覚えてるか?」
「うん」

 頷いて答える。
 以前、父にこの世はまるで、『出口のない迷路のようだ』という話をされたことがある。
 その迷路に出口はなく、自分がどこにいるのかがわからない。みんな出口を探している。途中でそんなものはないと何人かが気づく。だから代わりに目的地を探す。でもそれだってほとんどの人間は見つけられずに死んでいく。だから、多くの人は死を目的地と定め、いい人生だった、なんて言って死んでいく。「父さんはな、それが納得できないんだ」と言っていた。納得したふりをすることはできる。でもそれは嘘だって、他の誰よりも、自分が気づいているんだ。だからずっと悩み続けているんだよ。そしてこの問題が解決することはないんだろうって思っているんだ。
 そんなことを言っていた。

「お前の目的地は……彼女と共にあるんだろうな。父さんはどうしても、お前が危険な道に行くことを応援することはできない。でもな、やっぱり、自分の道は自分で決めるべきだし、他人が決めれるわけじゃないんだ。……お前が本当にその道を進むと決めたら、どんなものに逆らうことになっても進むしかない」

 父は気弱そうな笑みを浮かべる。

「応援してあげられなくてごめんな。でもこれは、変えられないことだから」

 父の言葉は、確実に欲しい言葉ではなかった。要するに、自分のことは自分で決めるしかない、とながながと説いただけだ。突き放した言葉だった。助けてはくれなかった。

 ……だが確かに、父は信念を僕に伝えた。



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