女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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4:名無しNIPPER[sage]
2017/08/13(日) 18:15:49.85 ID:/6Xwlc9Z0
「娘はね、あなたのことが好きだったみたいなの」と彼女の母は言った。なにかをこらえるように、それだけを言った。
頭が痛い。立ち上がるもふらつく。
「失礼……します」
「気を付けて帰りなさい」
「はい」
扉を開ける。目の前にはどこまでも真っ暗な風景が広がっていた。
罪悪感。それを今、僕は感じている。だからと言って何かができるわけではない。
「……きさん……ゆうきさん!」
誰かが呼ぶ声。その方向に眼を向ける。そいつが誰か、僕は知っている。
「卓也」
彼女の一つ年下の弟だ。彼は僕のことを裕樹さん、と親しみをこめて言う。今、最も顔を合わせたくない相手だった。
「こっちに来て祐樹さん。話があるんだ」
「……わかった」
卓也に黙ってついていく。やがて人気のしない場所に出た。そこでようやく、彼は話し始めた。
「父さんと母さんから、話は聞いた?」
「うん」
「じゃあさ――」
姉さんを救おう。飛び出したのは、そんな言葉だった。
「馬鹿な。何を言って……」
「父さんと母さんには許可はとってある」
その言葉に思わず絶句する。その言葉がどういった意味を持っているのか。
この都市において、法は絶対だ。それを守りきるために、破れば過剰な罰が与えられる。特に、反乱行為には顕著だ。
……実際、前例がある。緑の矢に選ばれた者を救うために、施設に忍び込んだものがいた。そいつは犠牲者の父親だった。結果はあっけなく捕らえられた。……それだけで終わったわけではない。
『犠牲者の血縁関係があるものがその奪還を目論んだ場合、その血を絶やす』こんな条文がある。
まさか。本当に実行されるとは思わなかった。国民のほとんどは、これがただのこけおどしの法だし思っていただろう。
果たしてそれは実行された。
今でもよく覚えている。


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