神谷奈緒「晴れは雨があってこそ」
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6:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:13:42.82 ID:KS3A+iW2O




シャワーを浴び、事務所に戻った奈緒はソファに座りながら雑誌を読んでいる加蓮を視界に捉える。普段なら後ろから声でもかけて驚かせてやろうという所だが、今はとてもそんな気分ではない。ソファには近づかず、冷蔵庫にまっすぐ進み、スポーツドリンクを取り出して一気に煽る。冷たい甘みと酸味が喉を走り、さっぱりとした後味は多少なりと奈緒の中のもやを取り払ったように思える。一口で半分ほど減ったスポーツドリンクの蓋を締めたところで、背後に気配を感じる。

「加蓮かっ!?」

必要も無いのに大仰なアクションで振り返る。が、そこに立っていたのは加蓮では無かった。

「よう、お疲れ」

「Pさん……」

なーにビビってんだ?と軽く笑みを浮かべるこの男は奈緒の、というよりはトライアドプリムスのプロデューサーであった。

「調子はどうだ?」

何の気なしに発せられた質問だろうが、今の奈緒は素直に答えられない。

「うーん…まぁ、それなり……かな?」

あやふやになった回答にしかし、プロデューサーは特に聞き返すでもなく、そうか、とだけ答え自分のデスクへと戻っていった。
その時に見せた奈緒への目線が、どこか不自然なものに感じられたのは今の自分がナーバスになっているからか。うまく表情を読めず、自分の気持ちに整理もつけられない。他愛ない、ほんの短い会話だったはずなのに心にかかるもやはその質量を増したような気がして、鉛を飲んだような気分に辟易する。


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