7:名無しNIPPER[saga]
2017/09/16(土) 23:14:35.62 ID:KS3A+iW2O
「なーおっ!」
「どわぁぁ!なんだ!?」
一人思案に耽り、まったく周りが見えていなかったようだ。いつの間にか目の前にいた加蓮にいきなり抱きつかれ、奈緒は混乱する。加蓮がソファから立っていたことも、自分の前まで来ていたことも全く気付かなかった。
「もう、何回も呼んでるのに全く気付いてくれないんだから」
「悪い悪い……」
頭を掻きながら、胸中にもやを押し込める。この感情を加蓮に知られるわけにはいかない。
「ねえ、奈緒はあれ、見てくれた?」
あれ?全く心当たりがない。
「何のことだ?」
「えーっ!あれだよ、私が表紙の雑誌!」
「あぁ!」
言われて気づく。たしか少し前、加蓮に撮影の仕事が入っていたっけ。それが雑誌の撮影だった、というわけか。
「ごめん、まだ見てない。今日が発売日だったのか?」
正直に答えると、加蓮はほっぺたをぷくっと膨らませる。わざと指でまゆを吊り上げ、さも『私は怒っていますよ』とでも言わんばかりの表情をつくる。面白い。
「奈緒の薄情者ー。ぶーぶー」
口を尖らせる加蓮。そんなふざけた表情も何だか可愛らしくて、でもそこで遂にダムは決壊する。
「あっははは!なんだその顔!」
こらえ切れずにお腹を抑えて笑う奈緒に対して、元の表情に戻った加蓮もつられて笑う。そうしてひとしきり笑った後、不意に加蓮が呟く。
「あー良かったっ」
「何がだ?」
「やっと奈緒が笑ってくれたよ」
「!」
21Res/19.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20