梨子「──"私の音"と誕生日。」
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4: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/19(火) 00:01:02.90 ID:lKcuUgd9o




ポロン──ポロンと鍵盤を弾く。


梨子「……違う」


メロディを紡ぐために、必死に


梨子「……ダメだ」


私は項垂れた。全然うまくいかない。


梨子「……どうすればいいんだろう」


そうぼやきながら、天井を仰ぐ。

休日の音楽室には私一人。

ピアノの音が止むと外からは運動部の声が防音の窓越しに僅かに聞こえていた。

──夏休みを迎えてから既に数日が経った、今現在。何故、私──桜内梨子がわざわざ登校してまで音楽室にいるのか言うと


梨子「曲作り……進まないな」


作曲の為だった。

もちろん、自宅にもピアノはあるのだけど……。

本番はグランドピアノだし、何より自宅だと集中できなかった。


梨子「まあ、今も集中出来てないんだけど……」


誰もいない音楽室で私はそう、ひとりごちた。

軽く一息ついてから、何気なく音楽室を見回す。

音楽室特有の穴の空いた壁──えっと有孔ボードだっけ?

そして、室内の後ろ側からは稀代の音楽家達の肖像画たちが私を見つめていた。


梨子「立派な音楽室……だなぁ」


もともと音楽が強い学校ということで進学してきたから、音楽室が立派なのは想定内だったんだけど。


梨子「……でもその割に私以外、誰もいない」


私はピアノを軽く撫でながら、そう呟いた。

自分以外はほとんど触れることのないこのピアノ。

さすがに授業では使うから、よく手入れされてはいるけど

正直、歌唱部や吹奏楽部がないのは意外だった。

昔から音楽系の強い学校とは聞いていたのだけど、実際入ってみると音楽と言うよりはダンス……?

屋上からよく音楽が流れているし、そっちの方向にシフトしたのかな。



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