梨子「──"私の音"と誕生日。」
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5: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/09/19(火) 00:02:55.55 ID:lKcuUgd9o

梨子「……まあ、どちらにしろ一人で弾くものだから気軽でいいんだけど」


ただ、そうは言っても作曲は全然進んでないし、今日はもうダメそう……。

──家に帰ろうかな。





    *    *    *





夏休みの閑散とした、廊下を伏し目がちに歩く。

結局、今日もほとんど進まなかったな……。


「あれ? 桜内さん」

梨子「?」


突然声を掛けられて顔をあげる。

クラスメイトだった。


「どうしたの? 夏休みなのに」

梨子「え、えっと……ピアノの練習をしたくて……」

「あー、そういえば桜内さんいつもピアノ弾いてるもんね。今度聴きに行ってもいい?」

梨子「え? あ、いや……人に聴かせられるようなものじゃないから……」


正直、今の自分のピアノを人に聴かれたくないし。


「そうなの? ま、いやならしょうがないかー」


随分とさっぱりした人みたいだ。まあ、その方が助かるけど……


「そういえば、夏休み明けたらなんだけど──」


その言葉に少し眉が引き攣った。


梨子「ごめんなさい。夏休みの後のことは、今考える余裕がなくて……」

「え?」


私の切り替えしにクラスメイトが少し間抜けな声をあげた。


梨子「……ごめんなさい。」


そう言って、彼女の横を逃げるようにすり抜けた。


「あ、ちょっと」


ごめんね、本当に余裕がないの……。

──ピアノコンクールが終わったあとのことなんて、考えてる暇ないの。





    *    *    *




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