モバP「中野有香と怪しい武術プロデューサー」
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39:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:46:58.47 ID:AW4FyFFm0

――"曇天看破"は、単なる連続技ではない。
暗中模索の末にあり、己の雲を解き放つ。
迷いを捨てた天連打。数多降り注ぐ光明だ――

一、二、三、四、五、六、七、八、九、十、十一、十二。

「今度は私が、あなたを救ってみせますっ!!」

ドドドドドドドドドドドドッ。

一息十二撃が雲間を切り裂いた。

あたかも皇女を前に平伏する衆民のごとく、誰も彼もが膝から崩れ落ちる。
彼らはゆっくりとその頭を垂れて、有香を中心に幾何学的な文様を作りながら、
どしゃっと前のめりに倒れていった。

「だから――」

「だからいなくなるなんて、言わないでください」

俺は思う。怒っているなんて嘘だろう。
もうほとんど、泣き声に変わっているんだから。

「ずっと、そばにいてほしいんです」

「――私の、プロデューサーさんでいてほしいんです」

今気づいた。とっくに組長(会長?)はいなくなっていた。彼らは逃げ足だけは早い。
しんとした廃倉庫の中、ただ一人立ち尽くすのは胡蝶か皇女か、大蛇か虎か、それとも龍か。

違う。アイドル中野有香だ。

俺は、俺は――。
もがもがもがもが、あー喋れない。ごめん。

その時、ぞわりと物陰から冷たい勁が流れてくるのが分かった。
ドライアイスのように溢れ出た外勁が俺の足首までひとのみに覆い尽くす。

長身痩躯、細目の丸眼鏡。
おぞましい勁を携えたそいつが、にたにたと有香を見つめていた。



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