モバP「中野有香と怪しい武術プロデューサー」
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40:名無しNIPPER[saga]
2017/11/13(月) 19:49:45.56 ID:AW4FyFFm0

何時間か前にも見た余裕の表情。もう十分"溜め終えた"って顔だ。
また隠れてバイキルトをかけていたらしい。卑怯者め。
出てくるタイミングを考えろ、空気がぶち壊しだ。

予期していなかった新手を前に、有香が構えをとりなおす。
これまでの雑魚とはわけが違うことを悟ったのか、警戒の色を強め後ずさりをする。

有香はどういうわけか以前より遙かに強くなっている。
勁の総量も俺に比肩するほどには増している。

しかし、俺に比肩するくらいではまだ力不足だ。
バイキルト時の丸眼鏡はその上をいく。今回ばかりは相手が悪い。

早く有香を逃がさなくては。

俺だってただ唯々諾々と縛られていたわけではない。
目が覚めたその瞬間から"溜め続けていた"。この状況を打開するために。
"万天響命"ははっきりいって苦手な技なので、チャージは遅々として進まなかったが。

もう少し、もう少し時間があれば彼女を助けることができるのに。

……?

なんだ? 違和。違和感がある。

足裏から止めどなく注ぎ込まれるこの暖かい勁は一体……?

丸眼鏡が"戴天"の構えを取る。外勁が巨大な大蛇となって鎌首をもたげてきた。
獲物を捉えるときに使う威嚇のポーズだ。攻撃が来る。

「ジャアァッ!」

一息で間合いを詰め、必殺の打突が有香の側頭部に滑り込んできた。
目では追いきれないほどのスピード。30fpsではほとんど映らないだろう。

やられる。思わず目を背けてしまった。が、

からんからんっ。

まるっきりでたらめな超反応を見せて有香の体が翻る。
丸眼鏡の一撃は彼女がつけた龍の仮面をはじき飛ばすだけに終わった。
有香のカワイイ顔が露わになる。きりりとした眉、きゅっと結んだ口。いい……。

丸眼鏡の攻撃を避けたのも驚きだが、それ以上に俺を驚愕させたのは、
有香の勁がほんの数秒前より何倍にも膨れ上がっているという事実だった。

ありえない。

でも、そうとしか考えられない。



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