172: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/03/31(土) 13:37:58.76 ID:CbeXd7Pc0
 王子「さあ、遠慮せずに食べてくれ! これは僕からの餞別だ」  
    
  饅頭を盆に載せ、土埃舞う作業場を歩いて回る。  
  王子は奴隷達が目を輝かせて饅頭に飛びつくものだと考えていた。  
    
173: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/03/31(土) 13:57:33.09 ID:CbeXd7Pc0
 奴隷少女「昨夜も炭鉱区で働く女の子が死んだよ。現場監督に嫌われて、鞭打たれて殺されたんだ」 
  
 奴隷少女「あの女の子は、歌が上手でさ。王族にも貴族にも平民にも分け隔てなく声を届ける歌姫になりたいって笑顔で話してた」 
  
 奴隷少女「お前ら王族が、彼女の笑顔を奪ったんだ。それだけじゃない。今も数えきれないほどの奴隷が、不当な暴力で命を奪われてる。その自覚が、あんたら支配層にはあんのかよ」 
174: ◆EpvVHyg9JE[sage]
2018/03/31(土) 13:59:12.77 ID:CbeXd7Pc0
 誤字 
  
 奴隷達は奴隷達は 
  
 ではなく 
175:名無しNIPPER[sage]
2018/04/16(月) 00:37:51.61 ID:0F3DPzqA0
 ほ 
176: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 22:59:31.45 ID:9B6rFOCH0
 王子と白騎士は互いに一言も喋らず、厨房へ繋がる廊下を歩いていた。  
  あの後、王子は白騎士と侍従二人を連れて逃げるように作業場を立ち去ったのだ。  
  奴隷の心は、奴隷の身分に落とされなければ分からない。  
  王権の庇護下にある王子に、理解できるはずがなかった。  
    
177: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 23:00:44.51 ID:9B6rFOCH0
 勇者の家。枕元に、二人の男が座っている。 
 一人は羽扇を片手に携えた童顔の小男。 
 一人は鎖帷子を着込んだ、若く精悍な将校である。 
  
 童顔の男が呆れたように呟いた。 
178: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 23:02:19.28 ID:9B6rFOCH0
 軍師がベッドの上に大きな地図を広げた。 
  
 軍師「やはり、王国軍だった」 
  
 勇者「なにが?」 
179: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 23:03:12.24 ID:9B6rFOCH0
 勇者「なんとかして大唐国をアルマリクから引っぺがしたいね」 
  
 軍師「ならば、我々が力を示さねばならん。周辺の都市を味方につけ、王国軍に負けぬほど勢力を拡大し、同盟を組んで利のある相手であることを教えなければならない。それは分かっている」 
  
 軍師「分かっているからこそ、今回の会議を開いたのだ。バルフの次に手に入れるべき場所を、貴様に伝えようと思ってな」 
180: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/04/18(水) 23:06:20.31 ID:9B6rFOCH0
 勇者「けど、いきなり押しかけて『国と戦争するから味方になってください!』なんて頼んだところで、余計な厄介ごとに巻き込まないでほしいって突っぱねられるに決まってるよ」 
  
 軍師「真正面から突入してどうする。自分が勇者であることは隠せ」 
  
 勇者「え、俺が行くの?」 
181:名無しNIPPER[sage]
2018/04/18(水) 23:13:46.09 ID:SKkuLY9A0
 乙 
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