199: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/11(金) 00:20:02.16 ID:QmyZmny70
 急な螺旋階段を上り、三階の客室に案内された。 
 がらんとした殺風景な部屋に、寝具と思しき毛布が二つ敷いてある。 
  
 奥の壁には、四角い小窓がひとつ。 
 窓と言っても穴を開けただけなので、冷たい風はもちろん吹き込むし、雨の日に立てば身体が濡れてしまう。 
 それでも、野宿するよりは百倍ましだった。 
  
 勇者「金も払わずお世話になっていいのかな」 
  
 魔女「こちらが払おうとしても、相手は受け取らないだろうね」 
  
 勇者「俺、ちょっとハザラ族のことが好きになりかけてる。こんな優しい人達に巡り合えて、幸先が良いな」 
  
 魔女「先に言っとくけど、これは慈善事業じゃないよ。客に問題を起こされたくないから、安全に村を通過してほしいから待遇を良くするんだ。一種の自己防衛さ」 
  
 窓から外を覗くと、宿屋の主人が二人の供を連れて隊商宿から出て行く様子が目に入った。 
 三人とも、農業用のフォークを担いでいる。牛に脱穀をさせた後は、何をするつもりなのか。 
 勇者は彼らの行き先を見守った。 
  
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