203: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 00:34:12.44 ID:hJN7I0W/0
 隊商宿を出て麦山を横目に少し歩くと、卵型の大きな建物が見えた。 
 外壁も床も、なんとすべすべした大理石でできている。 
 ハザラ族が建てたものとは、到底思えない。 
 しかし、勇者は首を横に振る。 
  
 勇者「俺が想像する以上に、ハザラ族は進歩した技術を持っているのかもしれない。まだ決めつけるのは早いぞ」 
  
 部屋の中央に、焼けて赤くなった石が置いてある。 
 扉の辺りにあった水瓶を抱え、なみなみと注がれた冷水を石にかけてみる。たちまち白い湯気が立ち昇った。 
 焼けた石に水をかけ、蒸気で室内の温度を上げる。単純だが、なかなか考えられている。 
 勇者は大理石の床にあぐらをかき、ぼんやりと石を眺めた。 
  
 勇者「散々な一日だったな」 
  
 牧草地を抜けてから、ひたすら荒れた山道を歩き続けた。 
 疲れ果て脚が棒になっても、魔女は平気な顔で急かしてくる。 
 最初に会った時と、だいぶ印象が変わった。 
 謎の多い美女というよりも、ただの面倒臭いお姉さんのように思える。 
  
 魔女「やぁ、気持ちよさそうだね」 
  
 身体に布を巻いた魔女が、勇者の隣に腰を下ろした。 
  
 勇者「魔女、どうして来たんだよ」 
  
 魔女「ん? ボクも汗を流そうかなって。悪いかな?」 
  
 勇者「別に悪くはないけど……目のやり場に困る」 
  
 魔女「キミは前を向いてひたすら突き進めばいい。横や後ろを見張るのは、ボク達の仕事さ」 
  
 勇者「いや、そういう意味ではなくてね……」 
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