205: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:24:06.67 ID:hJN7I0W/0
 しばらく二人は無言で焼石から立ち上る蒸気を眺めた。 
  
 勇者「……間諜が命懸けで道を切り開いているのに、俺達だけサウナでのんびりしていいのかな」 
  
 魔女「平和だよね、この村」 
  
 勇者「ああ」 
  
 魔女「厄介ごとなんか起きて欲しくないよね〜、ふっふっふ」 
  
 まるで厄介ごとを望んでいるかのような口ぶりに、勇者は肩を竦めた。仰向けに寝転がる。 
 天井のアラベスクがぼやけて見える。隣では、魔女が顔に泥を塗りたくっていた。 
  
 勇者「そういえば……さっきの話、聞かせてくれ」 
  
 魔女「さっきの話?」 
  
 泥まみれのまま、覗き込んでくる魔女。 
  
 勇者「俺の考えていることが分かるんだろ。サウナにいるのは俺とあんただけだ。遠慮なく言えよ」 
  
 魔女「ん〜とね、キミは『美人と定評のある魔女先生と同じ部屋? なんたる僥倖、デュフフ!』と考えて……」 
  
 言いかけたところで、魔女はハッと顔を上げた。 
 暗闇の中、一点だけを見つめている。 
  
 魔女「あそこに、誰かいる」 
  
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