206: ◆EpvVHyg9JE[saga]
2018/05/15(火) 23:27:32.93 ID:hJN7I0W/0
 勇者「俺達の他に? まさか、変なこと言うなよ」 
  
 魔女「キミ、そんな隅にいて寂しくないかい。ボク達のところへ来てくれないか。ハザラ族の民謡に興味があるんだ」 
  
 返事はなかった。物が動く気配すら感じられない。 
  
 魔女「勇者君、行ってみよう。様子がおかしい」 
  
 勇者「おい、そんな大胆に近寄っていいのかよ」 
  
 急いで後を追うと、魔女が振り向いて言った。 
  
 魔女「見給え、ボクの予想した通り人が倒れている」 
  
 痩せこけた老人が、壁にもたれかかっていた。すでに息絶えている。 
 特にこれといった傷痕は見当たらないが、落ち窪んだ眼窩や骨と皮だけの遺骸は、異常極まる状況と呼ぶに十分過ぎた。 
  
 魔女「すごいなキミは。厄介ごとを招き寄せる天才だ」 
  
 勇者「それなら凡才の方が良かったよ、まったく」 
  
 荒れ地の奥に潜む謎の集落。 
 誰でも無料で泊める隊商宿。 
 官員と怪しい取引をする宿の主人。 
 そして、事件を引き寄せる勇者の宿命。 
  
 これだけの条件が揃っていて、無事に村を通り抜けられるはずがない。 
  
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