2: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:06:44.47 ID:amdXqONW0
※ ※ ※
「あ、プロデューサーさん!」
私が来たことに気がつくと島村さんはスタッフの方に挨拶をして、撮影で疲れているだろうに笑顔で駆け寄ってくれました。
「お疲れ様です、島村さん」
「ありがとうございますプロデューサーさん! 今回は初めての方が多かったので緊張したんですけど、笑顔でがんばれました!」
「ええ、それは何よりです」
笑顔で私に話しかけてくれる島村さんはいつも通りで、変わった様子は見受けられません。
もし私の頬に口づけをしたのが島村さんなら、こうはいかないでしょう。
私の思い過ごしだったか。
そう安堵した時に、鼻をくすぐる匂いがしました。
薔薇の香りです。
「プロデューサーさん?」
「……あ、はい!」
「どうかしましたか?」
匂いが薔薇であることに気がつき、不自然に硬直してしまったのでしょう。
島村さんが心配げに私を覗きこんでいます。
「いえ……薔薇の香りがするなと思いまして」
「あ、気づきましたか!?」
匂いについて口にすると、島村さんは嬉しそうに両手を前で合わせました。
「友達に勧められたシャンプーで、薔薇の香りがするんです。良い匂いがして気分が落ち着いて、とても気に入っているんです。プロデューサーさんはどう思いますか?」
この香りについてどう思うか。
真っ先に思い浮かんだことは――
「ええ、私もこの香りはたいへん良いと思います」
――口づけされる前に漂った匂いと、まったく同じだということでした。
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