武内P「眠る私に口づけをしたのは」
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7: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2017/12/30(土) 06:10:04.49 ID:amdXqONW0
「え、ええとですねっ。だから、プロデューサーさんの顔が真っ赤で……か、顔を覆っていてよく見えなかったんですけど、恥ずかしそうにしているのがわかって、その――」

迷っている中で気づけたのは、どうやら島村さんも私と同じぐらい混乱されていることです。
ワタワタと手を動かしながら、身振り手振り説明をされているのですが、頭がまるで追いつきません。

可愛い?
私が?
島村さんから見て?


「だ……だからその――――プロデューサーさんも、あんな顔をして、それを私に見せてくれたのが――す、すみません失礼します!!」


緊張から顔が次第に赤くなり、ついには湯気が出るのではと心配になった時のことです。
島村さんは慌てて席を立ち、転がるように車を出ます。

心配になって私も立ち上がろうとしましたが、島村さんがピタリと動きを止めたのにつられて止まります。

ゆっくりとぎこちなく彼女は振り返ると、誰かに見られていないか左右をゆっくりと確認すると――


「きょ、今日も一日ありがとうございました、プロデューサーさん♪」

「ッ!?」


右手を唇にそえ片目を閉じると、今度は右手を私に投げかけました。

――投げ、キッスです。

自分は見惚れいるのか、愕然としているのか。
自分でもわからないまま、車のドアを閉めて足早に玄関へと去って行く島村さんの姿を呆然と見送ります。


「…………これは、偶然なのでしょうか」


アイドルとして投げキッスの練習をすることはあるでしょう。
そして先ほどの島村さんのテンションはいつもより高く、つい練習していたことを私にしてしまったかもしれません。

ですが――島村さんが寝ている私の頬にキスをしたのではないかと考えた日に、投げキッスを私にしてみせたのは意味があるのではないか。
そもそも指でつつかれて、キスをされたと勘違いするなんてことがあるのか。

指先で私の頬をつついたのではなく――本当は本当に、寝ている私にキスをしたのでは?

そんなはずはない、自惚れるな気持ち悪いと必死になって自分に言い聞かせるのですが、島村さんのあの天使のような投げキッスが脳裏に刻みこまれ、ありえない妄想が離れようとしてくれません。


「ああ――――」


島村さんが眠る私に口づけしたなど、思い違いにすぎないという確信を得るために車で送りました。
ですが結果は、かえってありえない妄想が強まる始末。
もはや頭の中は島村さんのことでいっぱいで、どうしたものかと途方にくれます。

明日からどんな顔で島村さんと顔を合わせればいいのか。

ため息をつきながら私は会社に戻るのでした。





〜おしまい〜


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