ボク/ワタシが如何にして時間の夢を美穂さんと見るのか
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36:名無しNIPPER[sage]
2017/12/31(日) 20:43:18.29 ID:cO+HlQy0o

 見慣れないこじんまりとしたマンションに帰宅したボクは、階段の途中でたそがれるように天井を見上げた。無機質でざらざらなアスファルトの壁が黙ったままボクを見下ろしているだけです。
 長く伸びた髪が頭を重たく後ろへと引っ張りバランスを崩しかける。その重たさは五年という月日の重さのようで。
 時間の重みを物理的に感じられるように伸ばしているのかもしれないです。
 もちろん未来のボクと十四歳であるこのボクは同一人物であると同時に、まるで別人のようなものでもあるので、自分のことだとしても何を考えているかなんて全然わかりませんけれど。
 五年という月日がボク自身に何をもたらしたのか、ボクには知る余地もないことですが、しかし、とりあえずわかりきったひとつの事実だけがあります。
 今からボクは、美穂さんと暮らす家に帰るということ──つまりそれは。

『おかえりなさい、幸子ちゃん。お風呂にする? それともご飯が先かな』

 なんてやり取りも有り得るわけで。
 ……いや、それは冗談ですが。少し期待をしてはいますが、たぶんないです。
 さて、くだらない妄想は終わりです。いいかげんにたそがれていないで頭を切り替えてアイドルらしく、演者らしく、ボクは未来の自分を演じましょう。
 美穂さんにはいらない心配をかけないようにしないといけませんから。
 
「ただいま帰りました、美穂さん」

「おかえりなさい、幸子ちゃん」

 …………それにしても、これはとても心地よいものですね。



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