萩原雪歩「ココロをつたえる場所」
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3: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2017/12/31(日) 20:52:03.47 ID:bbgcA4Fi0
 プロデューサーの言葉に従い、荷物やら上着やらといった支度を整えた四人は揃ってラジオの放送局を後にした。駐車場に停められた事務所の車の前に集まって、何をするでもなく時間をつぶしていたのだが。
 プロデューサーの到着は雪歩や千鶴に語った言葉とは裏腹に、たっぷり10分以上も後のことだった。

「悪い、話が長引いて遅くなった! それじゃあ、劇場に戻ろう」

「お・に・い・ちゃん! アイドルを四人も寒空の下で待たせるなんて、ちょっとプロデューサーとしての自覚が足りないんじゃないの? 風邪とかひいたらどうするつもり!?」

「いや、返す言葉もない……。本当に悪かった!」

 まず噛みついたのが桃子だった。ほら、屈んで! と無理やりに姿勢を低くさせ、そのままお説教を始めようとする。
 年明けのにぎやかさも街並みから姿を消して久しいこの時期は、確かに屋外で長居していたいとはとても思えないような寒気をその場にいる全員にぶつけていた。すぐに行く、という言葉を信じて待っていた四人にとって、桃子の怒りは多少なりとも同意するところがある。とはいえ、だ。

「うぅ、冬は手もかじかんで細かい作業が大変だし、ロコにはハードな環境です……。ユキホ、後でホットなグリーンティーをいれてもらってもいいですか?」

「うん、大丈夫だよ。……プロデューサー、何か連絡はありますか?」

 寒さに耐えかねたロコが大きく身体を震わせる。長引いてしまってはよけい身体を冷やすことになるだろうと、雪歩はそれとなく助け舟を出してみることにした。

「ん、ああ。あるにはあるけど……落ち着いた場所で話したいな。桃子、悪いけど今は先に劇場に帰ろう」

「……わかった。話が済んだら、今度こそオシオキだからね」

 それが功を奏したのか、あるいは単純に桃子も寒さに耐えかねていたのか、ともかく一時的にでも怒りは収まったらしい。プロデューサーは苦笑とともに車にキーを差し込む。
 車内には暖房が備え付けてあるし、風が通らないというだけでも屋外よりは数段ましな環境だった。全員が乗り込み、シートベルトをしっかり締めたことを確認して、プロデューサーは車を走らせ始めた。



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