結城友奈「これは勇者たちの物語」
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3:名無しNIPPER[saga]
2018/01/12(金) 22:18:21.76 ID:QHT5/WDno

友奈(泣き続ける風先輩を樹ちゃんがなぐさめ続けている。風先輩の優しさが起こしてしまった出来事だから悲しい光景だけど、それでも確かに、あたたかい時間はそこにあって──)

友奈(突然、目の前に私たちのスマホが現れた。緊急速報のような不快な異音が鳴り響く。見ると、この場に居る全員、夏凜ちゃんと銀ちゃんのスマホも同じ状態だった)

銀「特別警報発令……と言うことは──!?」

パァーッ

友奈("私が行かないと!"と思った時には、鮮やかな色が世界に広がり、私たちは樹海の中に居た。……風先輩を止めることはできた。なら、私が今行うべきことは──)

夏凜「──しっかりしなさい、私! 緊急事態だとしても、まずは状況確認よ。バーテックスの一体や二体私が──え……? なによ、これ……」

友奈(皆の居場所を示すいつものスマホの画面は、半分近くが真っ赤に染まっていて、その赤い点全てがバーテックスだと私は知っている。──東郷さんの名前は画面の一番端、私たちと最も離れた場所にあった)

友奈「東郷さん……!」ダッ

夏凜「待ちなさい! 友奈!」

友奈(いても立ってもいられず、私は駆け出していた。後ろに夏凜ちゃんの気配は感じていたけど振り返る余裕なんてなかった)

友奈(進み、大量のバーテックスが壁の穴から侵入してくる姿を目の当たりにする。アニメで見た時よりとは比べ物にならない、本能に訴えかけてくるような恐怖があった。心臓の中で冷たい感触だけが広がっていく。──でも、壁のそばには私が探していた人も確かに居て)

友奈「東郷さん! ──え……?」

友奈(アニメで見た覚えのある武器を構えた東郷さんの後ろ姿。そこからさらに奥、私のよく知る人が……壁の上で、東郷さんを見守るように立っていた)

友奈「ぐん、ちゃん……?」

友奈(勇者姿になったぐんちゃんが、何故か目の前に居て──今更ぐんちゃんの端末が私たちのスマホに表示されていないことに気付いてしまう──違う! 今はそんなことはどうでも良くて──!)

夏凜「何やっているのよ東郷! まさか千景もなの!?」

郡千景「……」

東郷美森「……見ての通りよ、夏凜ちゃん。壁を壊したのは、私よ」

夏凜「な……っ! 何を言っているのか、分かっているのあんた!?」

友奈(夏凜ちゃんはもう追い付いていて、夏凜ちゃんの言葉に東郷さんはアニメで聞いた覚えのある言葉を返している。でも、そんなやり取りすら満足に私の耳へは入って来なくて……ただ私は、ぐんちゃんに向かって)

友奈「ぐんちゃん……どうして、ここに居るの……?」

友奈(私の口から辛うじて出た問いに、ぐんちゃんが初めて目を合わせてくれる。いつものぐんちゃんの優しい瞳だった。だから安心してしまう。……だけど)

郡千景「……そうね、言葉にするなら物語の行く末を見届けるために、かしら。……私は東郷美森を止めることなく、こうして今も見過ごし続けている。言わば彼女の共犯者と言っても過言ではないのでしょうね」

友奈(……ぐんちゃんの言っていることが理解できない……したく、なかった)






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