【モバマス】琥珀色のモラトリアム
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26:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:34:52.14 ID:vBuyWfgt0
「教えてくれプロデューサー……ボクはキミにとって一体『何者』なんだい……?」

その先の言葉を紡ぐことが出来ず、支えを失ったように冷たい床へとへたり込む。
力無く両腕で頭を抱え、情けなく嗚咽を漏らしながら。


27:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:35:33.74 ID:vBuyWfgt0


ほんの数十秒間ほどの沈黙が、永劫のように感じられた。
PCと空調の稼働音が嫌に大きく聞こえる。

以下略 AAS



28:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:36:05.66 ID:vBuyWfgt0
「……何故謝る。謝らなければならないのはボクの方なのに……」

「いや、俺にも……謝らなきゃいけない理由がある」

彼はそっと、躊躇うかのように臆病に、ボクの頭をその手で触れた。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:37:13.11 ID:vBuyWfgt0
「キミは……プロデューサーは……影絵を見せられて全てを知っているつもりになっていたボクを、洞窟から連れ出してくれたプラトンだ。閉じたセカイをこじ開けて、ボクに無知を教えてくれたソクラテスだ。キミは、ボクが欠かす事の出来ない片翼で、捻くれ者のボクを馬鹿にせずに語り合ってくれる友人で、少し抜けたところはあるけれど信頼できる大人で、ボクの……」


30:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:37:43.83 ID:vBuyWfgt0

「飛鳥」

言葉を遮ったのは、間違いなく意図的なもので。
でもそれを指摘するには、その声は余りにも虚が満ちていた。
以下略 AAS



31:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:38:53.78 ID:vBuyWfgt0
「俺はお前に、ずっと嘘をついていた。お前をお前自身の夢へ導くかのように騙った。お前の理想の大人であるように偽った。……飛鳥、俺はな。お前に俺のような大人になって欲しくないんだ」

「それは、どういう……」

「少し、昔話をしようか」
以下略 AAS



32:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:40:14.44 ID:vBuyWfgt0

昔々あるところに、夢に燃える少年がいた。
別にそう高望みをしていた訳じゃなかった。それでも、自分には特別な力があるんだと、何かを成し遂げることが出来るんだと信じて、色々なことに挑戦していた。器用貧乏な自分でも誰かに認めて貰いたくて、懸命に懸命に努力した。
でも、ダメだった。
よく「努力は裏切らない」って言うだろう?
以下略 AAS



33:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:40:43.10 ID:vBuyWfgt0
俺は、諦めた。
諦めたんだ。
誰かにお前は頑張ったと言われたかった。だからもうやらなくていいんだと言われたかった。そう自分に言い聞かせたかった。立ち止まってしまいたかった。
そしていつしか立ち止まった。
破れたイフの欠片を未練がましく持ちながら、何をするでもなく口だけは達者で。
以下略 AAS



34:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:41:33.57 ID:vBuyWfgt0
「……でも」

長い永い独白の後、彼は何かを振り払うように続けた。

「俺はここで、希望に出会った」
以下略 AAS



35:名無しNIPPER[sage saga]
2018/02/03(土) 00:42:19.03 ID:vBuyWfgt0
「飛鳥。お前は、俺の理想なんだ。俺はお前に、かつて喪った夢を見た。青臭くて、痛々しくて、捻くれて、それでも尚、世界へ叛逆しようと抗う若い力を見た。自分の考えに固執しすぎることも、他人に全てを委ねてただ流されるようなこともない、立ち止まることを知らない一筋の月明りを見た。……俺はお前に、救われたんだ」

その言葉が、ボクにはとても信じられなかった。
プロデューサーはいつもボクを導いてくれた。壁を乗り越えるための翼をくれた。解を見つけ出すための材料をくれた。彼はいつだってボクの前に立つ、強い大人だと思っていた。


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