1: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:00:21.16 ID:BEFLqt5g0
この争いを 終わりに出来る誰かは 天下無双の勝者
止まんな ビビんな 思ったそのまま初投稿です
https://imgur.com/a/NDOkb
荒木比奈「昨日今日あした未来」
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前作ですが、読まなくても大丈夫です
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2: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:02:19.98 ID:BEFLqt5g0
「じゃあ、お話ししまスね」
これは、「物語はいつも、出会いから始まる」って、私がより強く思うようになったお話だ。
3: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:03:11.39 ID:BEFLqt5g0
4月10日。
「あ、もう昼だ」と、私はそう思いながら目を覚ました。コタツに入ったままの下半身は汗をかいて蒸れていて、少し不快。
4: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:03:44.34 ID:BEFLqt5g0
「……」
涎を垂らし、だらしなく眠る彼女。そんな彼女の寝顔を見ると、彼女が授業中によく居眠りしていたことを思い出す。そして、受験期に、真剣な顔をして机へ向かっていたことも同じように思い出す。私がノートに落書きをしている間、彼女は苦手な英文法を克服しようとしていた、頑張って居た彼女の姿が脳裏に浮かぶ。
5: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:04:23.25 ID:BEFLqt5g0
絵を描くのは楽しいし好きだ。けれど、ならばその道でプロを目指すのかと問われると、私は首を縦に振ることは出来ない。
結局の所、私は弱い人間なのだ。
6: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:05:25.22 ID:BEFLqt5g0
ゲロ音がトイレからも漏れ出しているので、私は部屋に避難した。彼女が青い顔で出てくる
「マジごめん…」
7: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:05:57.22 ID:BEFLqt5g0
原稿のデータは保存せずに、ペンタブの電源を落とした。それから、涙を止める術のない私は、枕に顔を埋め、ただひたすらに情報をシャットアウトした。何も考えないように頭の中を空っぽにして、ただ時間が過ぎるのを待った。
気がついたら眠っていた。起きたら胸と頭が痛かった。気分は最悪のままだった。
8: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:06:31.88 ID:BEFLqt5g0
言いようのない不安と、将来に対する諦めのような何か。それらを抱えたまま歩いて行く。心臓はやけにうるさいのに、頭は逆に冷静で、何だろう、こんな感覚は初めてだ。
初めての感覚に戸惑いながら、重ったるい足を動かしていく。人混みの中で、なるべく下を向いて、歩き続ける。すると、交差点で赤信号に引っかかった。ここを渡れば銀行だというのに、待ち時間がやけにもったいなく感じる。時間なんて、これから先いくらでもあるだろうにと、自虐気味に心の中で呟いた。
9: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:07:03.33 ID:BEFLqt5g0
ハズだった。
10: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:07:40.89 ID:BEFLqt5g0
突然、がっしりと、右の手首を捕まれる。
「!? え? 何!?」
11: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:08:12.55 ID:BEFLqt5g0
ジェットコースターもびっくりの急展開が私を襲う。道行く人々は、私達のほうをチラチラと見ながらも、関わらないように早足になって横断歩道を渡っていく。
お願い? お願いって…。
12: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:08:40.81 ID:BEFLqt5g0
近くの喫茶店へ並んで入る。お客さんからもあまり見られない隅っこの席で、男の話を聞いていった。
「芸能事務所のプロデューサー?」
13: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:09:12.03 ID:BEFLqt5g0
「荒木さん。俺はあなたをアイドルになってもらいたいと、心の底から思っています」
真っ直ぐ私の方を見ながら、彼は言葉を紡ぐ。私は彼の視線の耐えられず、うつむきながら、また反論する。
14: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:09:45.32 ID:BEFLqt5g0
「アタシが…」
私は自分の事を、社会の片隅で、コッソリ生きていくのが性に合っている人間だと思っていた。漫画を描いて、食べて、寝てれば幸せな生き物なのだと、そう思っていた。
15: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:10:17.53 ID:BEFLqt5g0
チクタクと、時計の秒針の音をBGMに、私は昨日投げかけられた言葉を思い返していた。
『比奈にもいつか、きっと夢が見つかるって!』
16: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:10:50.39 ID:BEFLqt5g0
彼…プロデューサーさんと別れる前に、アタシは一つ条件を出した。それは、「アイドルするのは、今描いてる32ページを終わらせてから」というもの。プロデューサーさんは「終わったら連絡して欲しい」とだけ言って、もう一枚名刺を渡してきた。もうもらいましたよと指摘すると、恥ずかしそうに懐にしまった。
そして今は、ペン入れの真っ最中。驚くほどに筆は乗り、過去でも一、二を争うほど作業スピードがいい。
17: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:11:24.59 ID:BEFLqt5g0
◆◇◆
「と、まあ、こんなところっスね」
18: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:12:09.29 ID:BEFLqt5g0
午後11時30分。鍋もケーキも食べ終わって、後片付けも(「主役は座ってて」と主に二人が)した。二人はもう寝ている。明日がオフの私と違って、二人には仕事があるし、このままぐっすりとしてもらおう。本当はまだまだおしゃべりがしたかったけど、しょうがないよね。
私は一人起きて、スマホの画面を眺めていた。
19: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:13:09.34 ID:BEFLqt5g0
風が冷たい。でも体は熱い。大慌ててで電話に出る。
「も、もしもし!」
20: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:13:40.84 ID:BEFLqt5g0
疲れていながらも、彼の声は落ち着いていた。それに対して、私は巡り合わせのような、ご都合主義のようなこの状況で、心臓がバクバクしていた。だって、さっきまで思っていた人から電話がかかってくるなんて思っても見なかったことだし。
「で、でPさんは何の用っスか?」
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