1: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:22:05.90 ID:lFsgkv9uo
最初に彼女を見た時、気弱そうな女の子に見えた。本人は熊本の女は強いんです、と口癖のように言っていたけど恥ずかしがり屋であがっちゃって、ワタワタとして落ち着きがなくて。そんな姿が可愛いという声は多かった。とはいえ実際彼女は芯の強い子でその看板には偽りは無かった。それでも可愛い女の子、という印象は強く俺も彼女の一挙一動の可愛さにドキりとする事はあった。その都度あの子は担当アイドルだ! と言い聞かしてきたのだけど……。
「プ、プロデューサーさんの事がですね……す、すきなんですっ!」
告白、されちゃいました――。
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2: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:23:14.03 ID:lFsgkv9uo
「で、OK出しちゃったと」
「いやぁ、お恥ずかしい……」
3: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:24:53.47 ID:lFsgkv9uo
「でも1人の女子から言わせてもらうと」
「女子?」
4: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:26:48.63 ID:lFsgkv9uo
「ただいま……って来てたのか」
ちひろさんとの今後の打ち合わせを終えて(美穂には事前に伝えていて了承はもらっていた)家に帰ると、すでに玄関には可愛らしい靴が並べられていた。
5: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:29:56.24 ID:lFsgkv9uo
「思い上がらないで……すぅ」
「ごめんっ! って寝言か……」
6: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:30:38.12 ID:lFsgkv9uo
目と鼻の先、息も触れる距離。船を漕いでいた美穂も俺の輪郭がはっきりしてくるにつれて顔を赤らめていく。
「わわっ! 近いですよ!」
7: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:33:02.26 ID:lFsgkv9uo
「プロデューサーさんはゆっくりしていてくださいね」
そう言って美穂は台所に立つ。包丁すら置いていなかった台所に左利き用の包丁が置かれるようになったのはいつのことだっただろうか。
「手伝えることある?」
8: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:35:01.46 ID:lFsgkv9uo
「どうしたんですか? こっちを見て」
「いや、美穂も変わったなぁって思って」
「そうですか?」
9: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:38:50.22 ID:lFsgkv9uo
「いただきます」
何歳になっても手料理というものは良いものだ。それも自分のことを好きでいてくれる女の子が気持ちを込めて作ってくれたのならば尚更である。
「どうですか?」
10: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:40:53.14 ID:lFsgkv9uo
「プロデューサーさんの好みの味、研究した甲斐がありました」
アイドル活動もお料理も全力で頑張ってくれている。そのことがとても嬉しかった。
「そうそう、親御さんにこの前頂いた焼酎美味しかったって言ってたって伝えておいて欲しいんだ」
11: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:42:35.05 ID:lFsgkv9uo
彼女なりに気にしていたようだ。とはいえ、大人のお姉さん方とおつまみトークをしていた美穂はイキイキしていたと卯月から聞いていたし無理に嘘をつくこともないだろう。
「いやいや、そんなことはないよ。好きなものも嫌いなものも全部ひっくるめて小日向美穂って女の子でアイドルなわけだし。それに」
「それに?」
12: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:45:37.24 ID:lFsgkv9uo
「ふんふんふーん」
洗い物くらいは俺がやると美穂を休ませる。無防備にもソファに寝っ転がり足をバタバタさせながら携帯を見ている。付き合い始めたばかりの頃はロボットみたいにぎこちなかったのに、これはこれでリラックスしすぎな気がする。ちょいちょい美穂の私物も置かれるようになって来て半同棲生活みたいなものだから仕方ないのかもしれないけど。
「パンツ見えるよ?」
13: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:46:06.66 ID:lFsgkv9uo
「洗い物終わったら、一緒にぐだーってしませんか? こんな時間なんで日向ぼっこはできないけど……」
「はいはい」
洗い物をちゃっちゃと終わらせて美穂の隣に座る。一人暮らしには大きいくらいだったソファーだったけど、2人だと若干狭めだ。
14: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:48:30.56 ID:lFsgkv9uo
「で、でも! プロデューサーさんのガッシリとした身体はホッとしますし……みんな違って、みんな良いんですっ!」
そう言って美穂は強めに抱き寄ってくる。
「それに……プロデューサーさんがくれるドキドキが大好きなんです。今幸せだなぁって思えて……こんなに幸せでいいのかなって思っちゃうくらい」
15: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:51:02.90 ID:lFsgkv9uo
「じゃあ帰りますね」
恋人同士になって俺の部屋に通うようになっても今のところお泊まりはNGにしている。夜も遅いし送っていきたいのは山々だがパパラッチされたら致命的だ。寮からはそこまで距離が離れていないので、美穂はいつもそのまま1人で帰っている。美穂も制服の上に上着を着て眼鏡と帽子で変装をしているがそれでも気付く人は気付く。名残惜しいけど今日はお別れだ。
「また明日ですっ」
16: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:54:40.24 ID:lFsgkv9uo
「カット!」
「ふぅ……」
「お疲れ様、美穂」
17: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:55:53.19 ID:lFsgkv9uo
「なぁ、良かったらどこかに食べにいかない?」
少し歩けばお洒落な感じのお店も多い。男が一人で入るには敷居が高いような場所でも美穂がいたら……。
「あのー、それなんですけどね」
18: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/18(金) 23:58:10.96 ID:lFsgkv9uo
「この時間帯って他の曜日もあまり来ないんで、撮影の休憩の時なんかによく来ていたんです。私としてはあそこがおすすめですね」
お昼寝マスター小日向美穂に手を引っ張られる。
「私が好きな場所を、プロデューサーさんにも好きになって欲しくて……って、何だか恥ずかしいですね。子供たちが遊びに来る前にお弁当たべちゃいましょう」
19: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/19(土) 00:03:13.93 ID:hcHhCdieo
「他にも栄養とかも気を付けて作ったんですよ」
主食であるコンビニ弁当に栄養がないとは言わないけど(むしろキチンとしてそうだ)、美穂が作ってくれたってだけで凄い価値があるものになってくる。
「月並みなことしか言えないけど、美味しいよ」
20: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/19(土) 00:04:59.57 ID:hcHhCdieo
「ご飯を食べたばかりだから、すぐに眠くなっちゃいます……」
「すぐに寝たら牛になるぞ〜?」
「ふふっ、それは迷信です。むしろ食べたあとは横になってお昼寝するくらいがちょうど良いって前にテレビで言っていました」
21: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2018/05/19(土) 00:10:58.56 ID:hcHhCdieo
『ん……?』
気が付けば俺は教会の椅子に座っていた。周りを見渡すと少し大人になったアイドルのみんな。神父さんの前には白いスーツを着た男が立っていた。顔まではわからなかったけど、背はモデルのように高い。誰かの結婚式なんだろうか。そう思っていたら扉が開いてウェディングドレスを身にまとった新婦が父親に連れて歩いて来る。拍手とおめでとうの雨の中、彼女ははにかんだように笑って手を振る。
『美穂――』
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