11:名無しNIPPER[sage]
2018/05/22(火) 19:58:37.81 ID:6LeGnMhJ0
千聖「そうして身を寄せ合った私と花音は、夜景が見えるところまで行くの」
千聖「最前列の手すりにはやっぱり人がいっぱいいて……でも、少し後ろの方からの景色もとても素晴らしいものだわ」
千聖「夜の帳が降りた街。そこかしこで煌めく灯り。その輝き1つ1つの袂に人の生活が根付いているんでしょう」
千聖「楽しくて笑っている人、悲しくて泣いている人、虚しくてぼうっとしている人」
千聖「顔も知らない誰かの生活を勝手に空想して、星座の線みたいに街の灯を結ぶ」
千聖「そうしている間に、ちょうど私たちの目の前の手すりにいた人たちが退いた」
千聖「自然と前へ足を動かす私と花音」
千聖「展望台の最前列、何も視界を遮るものがなくなった夜景」
千聖「思わず感嘆のため息が出る私と、「わぁっ」と目を輝かせる花音」
千聖「何かを話そうかと思った。何かを話したいと思った」
千聖「でも、同時に何も話したくないとも思った」
千聖「花音の声が聴きたい。だけど言葉を交わせば、この幻想的な空気がありふれた生活感に染められてしまうかもしれない」
千聖「少し迷って、結局私は何も喋らないの」
千聖「ただ、眼前の星空と街灯りを見つめ、右腕に花音の存在を感じている」
千聖「その温もり以上のものを求めるだなんてきっと罰当たりなくらい欲張りなことなんだろう」
千聖「そんなことを思って」
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