渋谷凛「ふーん、アンタが私のプロデューサー?」
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20:名無しNIPPER[sage]
2018/06/08(金) 02:15:17.37 ID:eWOyioU/O
私とプロデューサーの最後のはっきりした思い出は、お別れの日以外だと、初詣になるんだと思う。
特に何かあったわけじゃなくて、事務所から少し離れた神社にお詣りに行って、屋台ではしゃいで、御神籤を引いて。それだけの、ありがちな半日。でもその時のことはものすごく鮮明に覚えてて、それはプロデューサーが射的がやたらうまかったからとか、焼きそばがおいしかったからとか、多分そういうことではない。
上手く言えないけど、上手くいうつもりもないし、ただ、私の人生の中で特別に大切な日のひとつなんだろうなって思う。
その日からはまた春のライブに向けてレッスン漬けで、プロデューサーとはたまに帰りにカフェによるくらいになった。そのカフェでも追い込みのせいで甘いものがあんまり食べられない私に合わせてプロデューサーもなぜかお菓子を控えてたから、黙々と紅茶を飲むばっかりだった。2人ともケーキとか好きなのにね。
…そうやって流れるみたいに時間が過ぎて、気づくとライブ当日で、その日のパフォーマンスは自分でもびっくりするくらい上手く行ったんだけど、そのままプロデューサーとさよならする時が来た。
「ライブお疲れ様」
なんて10分前には何でもない顔で言ってたくせに、最後はほとんど泣きそうな顔で
「明日から別のプロデューサーが来る。頑張れよ」
とか言う彼を、私は何も言えずに抱き寄せた。
プロデューサーはふいに、
「…なあ。昨日、泣かなかったのって、凛だろ?」
と言った。
「え?」
「俺が暇でよく喋ってたからだと思うんだけど、ちひろさんとか、他の事務員さんとか用務員さんとかにも結構気に入ってもらえてたみたいでさ。社長が、昨日俺が帰ったあと、事務所のメンバーは1人以外みんな泣いてた、って」
「その1人、私だとおもうんだ?」
「もう泣かないって言ってたからな。渋谷はそういうの、無理して守ろうとする」
私は頷いた。
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