26:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:03:11.67 ID:TXxgAIfuO
 「本当はね」 
  
  思索に沈みかかった私を、セイラムの申し訳なさそうな声が呼び戻します。 
  
 「貴女が十八になったら……正規に誓願を立てて、正式にシスターになる段が来たら。そこでちゃんと話すつもりだったんだ。どうしたって愉快な話じゃないから。こう言っちゃうと気を悪くするかもしれないけど、貴女はまだ、やっぱり子供だったから」 
  
  不安を持たせるのは気が引けた。その荷の後ろめたさを見習いの若い身に背負わせてはならないと、その思いは、神父様と三名の修道女たちの総意であったそうです。 
  
 「あわよくば、貴女が十八になる前に、知られる前になんとかできたらよかったんだけどね」 
 「……そうだったんですか」 
 「うん。ごめんね」 
  
  ひとりのけ者にされていたという、そのことへの憤りは、ありませんでした。 
  
  秘密を隠したまま私を迎え入れ、重荷を共有させようとしていたのではないか。そんな疑いも持ちませんでした。 
  
  セイラムは言いました。シスターになったら、ではなく、私が「正式にシスターになる段が来たら」と。つまり、私が誓願を立てる前には、この事実を告げるつもりだったのでしょう。きっと、嫌ならば去って構わないと退路を残す算段で。 
  
  両の眼から一筋ずつだけ、涙が流れる感覚がありました。 
73Res/52.75 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
書[5]
板[3] 1-[1] l20