28:名無しNIPPER[sage saga]
2018/07/14(土) 18:04:47.97 ID:TXxgAIfuO
  なお慮るように顔を覗き込むセイラムに、私は努めて笑みを向けました。 
  
 「あの日。去年の聖誕祭に。言ったでしょう」 
 「……聖誕祭?」 
 「この居場所を一緒に守ろうと、貴女が。私は、はいとこたえたじゃないですか」 
  
  セイラムは頭を抱えました。 
  
 「うわあたしそんなこと言った?」 
 「お、覚えていないのですかっ?」 
 「いやごめん! あのときはほらお酒入ってて」 
  
  私は、今日に知った事実を今日まで少しも悟ることができませんでした。それほど徹底して、彼女らは私に秘密が伝わらないよう努めていたのです。あの日違和感を生んだ台詞は、アルコールによって生まれたほんのわずかな隙だったのでしょう。 
  
  たとえそれが、酔いに任せて出た言葉だったのだとしても。セイラムがどういうつもりだったのかはわからなくとも。 
  
 「それでも、私のこたえはやはり変わりません」 
 「……そっか」 
  
  セイラムは、やっと笑いました。 
  
  心憂うような苦いものではなく、柔らかな抒情を感じる笑顔でした。 
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