10:名無しNIPPER[sage]
2018/07/27(金) 15:03:34.86 ID:YwSoJMOz0
……よくない!
馬鹿か私は。なんのためにここまで来たんだ。妙な空気に冷静さを失っちゃダメだ。今このまま彼女を行かせては、今までの行動全てが無駄になりかねない。
一言、最後に一言、私には宮永照に言わなければならないことがあるじゃないか。
「待って、宮永さん」
「……まだ何か?」
「そこの曲がり角、逆よ」
「……」
「……着いてく?」
「オネガイシマス」
実際、もう近いという言動は間違いじゃない。あと30メートルくらい、秒にして十数ってとこかしら。なので単刀直入に言おう。
「ねえ宮永さん?咲に……妹に会わない?」
なに、ちょっと発破をかけるだけだ。
それに、咲が臆病なだけで案外こういう一言であっさり解決してしまうかもしれない。それならそれでいいかなと思う。さあどんな返しがくるか。
ふ、と悪寒が走る。どきりとして後ろを振り返った……が、何もない、誰もいない。目線の先には殺風景な通路が一本延びているだけだ。
変ね、たしかに何か気配を感じたんだけれど。
「わたしに、」
「…え?」
「わたしに、妹はいない」
……。
…………は?
イモウトガイナイ?どこの言語なんだろう。
「じゃあ、改めてありがとう」
そう言い残して、宮永照が会見用の部屋に消える。しまった、考えに耽っていて返事をしそびれた。
そっかもしかして、妹がいない、か。
そういえば前にもそんな話を聞いた気がする。たしかあのときは又聞きだったから、実際にはなにか語弊があるんじゃないかとか、急にデリケートな質問がきて不用意に返してしまったんじゃないかとか思ってたんだっけ。
そうでなくても、妹が自分に会いにわざわざインハイまで来たとなれば蔑ろにするなんていないだろうとかも思ってたかもしれない。
いやぁビックリ。まさか本当に咲みたいないい子のこと、そんな風に言うなんて。
「……ふざけてる」
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