14: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:57:08.89 ID:Ai+XpKnp0
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写真集が刷り上がるまで、1ヶ月ほどかかる。
その前に、基礎レッスンが始まった。
「初めまして。私が川島さんを担当させてもらいます、トレーナーです!」
「本名は?」
「抹消されてます!」
瑞樹は吹き出した。
このプロダクションは、アイドルの緊張をほぐす技術に長けているらしい。
「それじゃあトレーナーさん、お手柔らかに」
「よろしくお願いします!」
どっちがお世話になるのやら、と瑞樹は微笑んだ。
だがレッスンが始まると、その微笑みが消えた。
体型を維持するためにスポーツジムには通っていた。
だが、ウォーミングアップの時点で息が上がる。
「いつもこれくらいなの……?」
思わず、気弱な声が出る。
トレーナーははつらつとした笑顔で答えた。
「いえ、今日は川島さんがどれくらい動けるか見るためなので」
「厳しめ?」
「抑えめです!」
瑞樹は苦笑いした。なにせ4ヶ月。レッスンも超特急になるだろう。
「ダンスの経験はありますか?」
「大学のレクリエーションと、社交ダンスが少々」
「じゃあ全くの素人ですね。がんばりましょう!」
ずいぶんモノをはっきり言うわね。瑞樹はまた苦笑いした。
だが瑞樹はこの、みずみずしい23歳の少女を気に入った。
ちやほやされて気を遣われるか、必要以上に高圧的にされるか、その2つでしかなかった。瑞樹にとってコミュニケーションというのは。
ここでは違う。
346での瑞樹は、仮初めとはいえ、アイドルになろうとしている1人の人間だ。
少女というには若くないが、“女”に振り回されるほど、周囲が無理解でない。
人生ではじめてするダンスのステップや、身のこなしに瑞樹は戸惑う。
あっという間に身体から大粒の汗が吹き出し、膝や背中が悲鳴を上げる。
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