5: ◆u2ReYOnfZaUs[sage]
2018/08/01(水) 00:48:13.17 ID:Ai+XpKnp0
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瑞樹が司会をつとめるバラエティ番組に、片桐早苗がやってきた。
毎日が充実していて、たのしくてしょうがない、という顔をしている。
瑞樹は笑顔を浮かべながらも、内心は劣等感で焦げ付きそうになっていた。
「片桐さんは、アイドルになる前はなにをされていたんですか?」
「警官であります!」
早苗がビシッと敬礼を決めた。その仕草すらハツラツとしていて、眩しい。
「日夜凶悪犯と鎬を削って……」
「早苗さん交通課でしょ〜」
別の出演者が早苗に茶々を入れる。
早苗がそれに照れたように、えへへと髪を指でかきあげる。
無邪気さを30手前まで持ち続けている早苗は、外見のことを除いても、みずみずしかった。
瑞樹はそのみずみずしさに嫉妬を一瞬忘れて、見惚れた。
「アイドルになったのはいつ頃ですか?」
実は、すでに瑞樹は答えを知っている。出演者の情報を仕込まないで番組に臨む司会者はいない。
早苗がアイドルになったのはごく最近のことだ。
まだ1年も経っていない。
「7年前、28歳のときです!」
早苗がおどけたように言うと、会場が湧いた。
自分の年齢がアイドルを始めるには遅すぎることを自虐的に表現したのだ。
28、という数字が瑞樹の耳に残った。
それを把握しているかのように、早苗が瑞樹に言った。
「川島さんもアイドルになってみれば?」
冗談だろうか。本気だろうか。
瑞樹はすぐに返答ができなかった。
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