バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」
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479: ◆GmHi5G5d.E[saga]
2018/12/23(日) 22:27:00.13 ID:G22OK9G00


 デスストロークは戦いが終わったと確信していた。彼女は死体に変貌した。これで周囲の者を片付けられる。


 まず彼が感じた違和感は、手首にあった。何かに掴まれている。そして次に、マシュの息遣いを感じた。死んで、いない? 何故? デスストロークには理解できない。それを余計なものと断じ、切り捨て、省みなくなってしまった戦士には、それを理解できない。


 マシュは目を鋭く光らせ、歯を食い縛り、全身に力を籠め、死の傭兵に抗った。デスストロークは腕を引き戻そうとする。できない。マシュの力が、跳ね上がっている。


「学習、しました」


 デスストロークは……スレイド・ウィルソンは、この瞬間、初めて戦慄した。自分は何かを見落としたのか? それは何だ? この力は何だ?

 凄まじいパワーのパンチが、デスストロークの顔面を捉え、仮面を弾き飛ばした。右目を眼帯で覆った初老の男性の顔が露になる。その顔は殆ど呆然としていた。それは自分が負ける理由を、今になってもう一度探し始めたかのようでもあった。

 マシュは情け容赦のない連続パンチをスレイドの顔面に叩き込み続ける。スレイドは何とか距離を離そうともがくが、マシュは彼の腕を放さず、至近距離に置き続ける。


「貴様!!」


 スレイドのフックがマシュの脇腹に突き刺さる。一瞬の力のゆるみに乗じ、体をもぎ離すと、彼は落ちていた剣を拾い上げた。格闘戦すら学習されたのならば、近距離戦にこだわる道理など無し! 少し離した間合いから徹底的に潰すのみだ!


 それは事実、見事なまでに冷静と呼べる切り替えだった。スレイドは勢いを盛り返し、マシュへと飛び掛かる。中距離からでも届く蹴りの連打だ! 

 獰猛な蹴りの嵐の中、マシュは防御姿勢を取り、決して崩さなかった。顔中血みどろになり、鎧の節々の肌から痛々しい内出血の痕が見える。だが彼女は耐え続ける。スレイドは敵の不屈を不可解に思う。とうに限界のハズだ。頭部へのダメージは深刻なまでに蓄積され、今にも気絶するほどだろう。だというのに、これは?


「これで、どうだ!」


 スレイドは美しいまでに均整の取れた姿勢で、ムチのようにしなる蹴りをマシュの頭部へと叩き込んだ。強烈な音が鳴り響き、マシュの姿勢が揺れる。勝機! その瞬間を狙い、スレイドは剣をマシュの顔に振り抜いた。一瞬後、彼女の頭部は半分に両断され、湿った音を立てて地面に落ちた。


 …………そうなるハズ、だった。スレイドは軌道上で止まった剣を訝しみ、視線をやった。彼女は歯で刃を噛み締め、止めていた。


「馬鹿な」


 マシュは体を捻り、回し蹴りを繰り出した。その蹴りはスレイドの首を目掛け、猛烈に加速して行く。それはデスストロークの潰れた右目側からの一撃であり、完全に死角を、虚を突いた回し蹴りだった。それは以前と同じ敗因であり、遡ればあの時点で、彼はこの戦いに負ける事が決まっていたのかもしれない。


 …………遡れば? デスストロークの脳に走馬燈じみて生前の出来事が去来する。遡れば、この右目が潰れていた事が敗因であり、遡れば、自分が傭兵を始めた事が敗因であり、遡れば……


「ああ」


 スレイドは自らが振りまいてきた理不尽に押しつぶされるのを感じながら、その一撃を受け入れた。






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