バットマン「グランド……オーダー?」レオナルド「その3だね」
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491: ◆GmHi5G5d.E[saga]
2019/01/16(水) 01:26:16.50 ID:Elqc4oHU0



 小さなミラーに、ケルト兵達を引き連れて城から現れる大男が映った。右手に持った朱色の槍、左手に持った緑の槍。それは間違いなく、ケルト兵の王、クーフーリンであった。デッドショットは瞬間的に沸騰しかけた怒りを無理に鎮め、深呼吸してスコープを覗き込む。


 スコープの中、拡大された狙撃ポイントは、民家の壁にかけられた仮面だ。あれが第一跳弾ポイント。クーフーリンが狙い通りのポイントに差し掛かった瞬間、撃つ。準備は完璧。あとは自分との戦いだ。


 フロイドはトリガーに指を掛け、息を殺してその瞬間を待った。ひりつくような太陽が容赦なく照りつけ、彼の思考を陽炎に変えて立ち昇らせる。集中力を高める必要がある。彼は狙撃の瞬間、心を落ち着ける記憶に浸る。娘との、ひと時の記憶に。その瞬間、彼は真に狙撃手足りうる。だからこそ、その瞬間、彼は謝罪する。


(ごめんな)


 指がトリガーを引く……その時、デッドショットの目は信じられぬものを捉える。小さなミラー越しにクーフーリンが振り向き、フロイドをまっすぐ見据え……にやりと、笑ったのだ。脳からの電気信号は止まらず、指がたたまれ、サイレンサー付きの銃口から弾丸が飛び出した。


 仮面に銃弾が当たり、跳弾。家屋の壁に当たり、跳弾。弾丸が標的に到達する僅かの時間に、デッドショットは自分の敗北を悟った。奴はこちらの狙撃に勘付いていた。この一撃は、防がれる……


 果たしてその通り、小さなミラーの中、人外じみた柔軟性で振り返ったクーフーリンは飛び来た銃弾を槍で弾いた。そのまま周囲のどよめきを置き去りに、槍を投げる体勢に入る。


(逃げねえと)


 逃げて、何処へ? 一種の自殺願望じみた思考が、デッドショットの思考を鈍らせた。ここで死ねば楽になれる。地獄のような現実ともおさらばだ。このまま、アイツが投げた槍に、胸を貫かれてしまえば……


 クーフーリンは槍を投げた。それは二者の間にあった建物を次々に突き破り、あっという間にデッドショットの目の前に飛来した。デッドショットは、フロイド・ロートンは、静かに目を瞑った。これで死ねる。娘を傷付けずに済む。


 だがその瞬間はいつまで経ってもやって来なかった。デッドショットは頬に散った生温かい感触に、ゆっくりと瞼を開いた。


 彼の目の前、小さな背中から朱色の槍が飛び出していた。ドラゴンのような尻尾が苦しげに動く。

「エリザベート?」


 死の高揚から引き戻されたデッドショットは、ひきつる喉から声を絞り出した。





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