【オリジナル】カッコつけた言葉はいつだって、堂々めぐりを繰り返す【短編】
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◆axPwtNeSoU
[saga]
2018/11/28(水) 00:30:43.72 ID:I9sKbOaA0
スツールの上で身を反らすようにして、何とはなしに店内を見渡す。
カウンターと、テーブル席が2つだけの狭い店だ。
満席になることはあまりないが、知る人ぞ知る、という感じの店らしく、芸能人などもたまに訪れるらしい。
壁に貼られた写真の一枚には、眼鏡の優しそうな中年男性と赤坂氏が写っていた。
何やら表面に文字らしきものが書かれているらしいので近寄って覗き込む。
マジックで書かれてる文字は――『俺と森本レオ』
……サインとかじゃなくて、あんたの字かよ。
脱力しつつ、席に戻る。
グラスに残っていた酒を飲み干して、お代わりを頼んだ。
再び独りだけになった空間で――また、溜め息が漏れた。
――昨晩。3年付き合ってた恋人に、俺は手ひどくフられた。
こんな日には、こういう行きつけの店の存在がありがたい。
「……世の中ね、顔かお金かなのよ」
そう捨て台詞を吐いて出て行ったアイツ。
冷め切った表情と声音の記憶がチラつき、シャツの胸元を握りしめる。
「痛いよ……ああ……酔いたい」
情けない話だが、独りで思い出すと、思わず涙がこぼれそうになる。
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