モバP「Mirror」
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1:名無しNIPPER[saga]
2019/02/08(金) 22:09:52.33 ID:441QTGT20
「楓さんは」


 窓際のソファーにいる彼女に声を掛けようとして、止めた。

 夕暮れ時の事務所は、普段ならもう少し人がいるものだ。
 ただ、たまたま今日は皆、仕事先から直帰したりオフだったりで、誰もいない。
 夏樹がいれば、まさにそこのソファーでギターを弾いてくれたりもするけど、今日は地元で用があるらしい。

 静かに流れる二人きりの空間──
 そして、窓の外を眺める彼女の物憂げな横顔は、何の気無しに声を掛ける軽率さを俺に抱かせた。


 ただ、あまりに他愛が無さすぎるなと思い直し、慌てて止めたけど、楓さんはこちらに振り向いている。
 遅かったか。

 開き直って、言葉を続ける。


「楓さんは、人前で泣いたことってあるんですか?」


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