千早「今日、母が私の家に来る」
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6:名無しNIPPER[saga]
2019/02/25(月) 23:35:41.92 ID:MVMHgjBu0
千種「それにしても……」

隣を歩く母が、ふと小さい声で言った。

千種「本当に、気付かれないものなのね。少し意外だわ」

千早「そうね……。きっとみんな、自分のことで忙しいんだと思うわ」

道行く人たちは、誰も私がアイドルだとは気付かない。
前を真っ直ぐに見つめて歩く人、携帯電話に目線を落としている人、友達とのお喋りに夢中な人。
帽子と眼鏡だけでも気付かれないというのは、初めは確かに少し意外だった。
もちろん、気付かれる時も少なくはないけれど。

母に事前に連絡を取ったとき、初めは、人気アイドルなんだからと出迎えを断られた。
でも「気を使ってくれるのは嬉しいけど、そんなことを気にしていたら普段も外出できない」、
そう言うと母は案外すんなりと折れてくれた。

……考えてみれば、母との仲が改善してからこういうことが多くなった気がする。
意見がぶつかりそうになると、母が先に折れて言い合いにならずに済む……そういうことが。
そう思うと、なんだか少し申し訳ない気もする。
私は相変わらず頑固なままで、自分の意見を通そうとしているばかりのような……。


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