如月千早がブスなワケ
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1: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:13:07.71 ID:mXNAEsvV0

如月千早と言う少女は、なるべくしてその立場に甘んじていると言うか、
アイドル候補生として事務所に所属していたものの、どうにも垢抜けない少女であった。

いいや、ここは心を鬼にしてハッキリ言おう。

彼女は酷くブスであった。

毎朝鏡を見ないのか、それとも鏡が家に無いのかもしれない。

肩ほどまで伸ばした長髪は手入れの後が一切なく、いつでも枝毛が飛んでいたし、

人を容易には寄せ付けない鋭さを持った眼光の上には無造作な眉が鎮座してる。

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2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:14:33.93 ID:mXNAEsvV0

同年代の天海春香が――あれはあれで愛嬌のある顔をしているが――

少しでも自分を良く見せようと後ろ髪の跳ね具合に悪戦苦闘している様に、

以下略 AAS



3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:17:03.42 ID:mXNAEsvV0

だが、そこまでお洒落に無頓着で、
容姿に難ありの千早が事務所に拾われたのにはワケがある。

実は、彼女は歌手志望であった。
以下略 AAS



4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:17:51.77 ID:mXNAEsvV0

だから、どうにか上手く売り出したかった。

しかし、それには分かりやすすぎる問題がある。

以下略 AAS



5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:19:26.83 ID:mXNAEsvV0

「……そんな事、歌の良し悪しには関係ないんじゃありませんか?」

そうしてある日の事である。

以下略 AAS



6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:21:03.25 ID:mXNAEsvV0

「だからちょっとした実験をしてみようよ。実はここに、昨日出来たばかりの君の歌声の入ったCDがあります」

言って、僕はデスクに置いてあったCDの詰め合わせを見せる。

以下略 AAS



7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:21:43.94 ID:mXNAEsvV0

「それから、これは春香君の分」

続いて僕は、この場に呼び出していたもう一人、春香にもCDを差し出した。

以下略 AAS



8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:22:39.16 ID:mXNAEsvV0
===

アイドルが行う路上ライブ、と書けば随分聞こえは良さそうだが、
実際は立ち止まる気配も稀な通行人に延々アプローチを続ける作業である。

以下略 AAS



9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:23:48.60 ID:mXNAEsvV0

「千早ちゃん……って、やっぱり凄いですね」

路上販売を始めて十数分、僕の隣では並べかけのCDを持った春香が固まっていた。

以下略 AAS



10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:25:37.69 ID:mXNAEsvV0

……逆に春香が歌う番になると、これが見事なまでに人の流れを留めることが出来なかった。

なぜなら彼女の歌唱力は、良くても一応聞けるかな? 程度の実に平凡レベルな代物であり、
むしろこれが本来の駆け出しアイドルの路上販売、その実態であると僕に見せつけているようでもあった。
以下略 AAS



11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:26:04.48 ID:mXNAEsvV0

とはいえ、応援しても二人の実力差は歴戦。

だが数時間後、「潮時だな」と撤収を決めた僕に喰ってかかったのは千早の方だ。

以下略 AAS



12: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:27:41.87 ID:mXNAEsvV0

「ご覧、今の自分の顔を」

言われた彼女が押し黙る。

以下略 AAS



13: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:28:57.53 ID:mXNAEsvV0

「今日、君は春香君に負けた。売り上げの数もそうであるし……
何よりも君は、自分に興味を持ってくれた相手に一度でも笑顔を見せてあげれたのかい?」

「それは……! それは、できてません……けど――」
以下略 AAS



14: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:30:27.30 ID:mXNAEsvV0

「でも、そんなこと、言われたって……」

千早が自分の腕を抱く。

以下略 AAS



15: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:31:17.02 ID:mXNAEsvV0
===

翌日、事務所で出会った千早は驚くべき変身を遂げていた。

髪はしっかり整えられ、眉も手入れをしたのかスッキリとし、
以下略 AAS



16: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:32:28.18 ID:mXNAEsvV0

「おはよう千早君、見違えたな。春香君も協力ありがとう」

挨拶しながら近づくと、二人は同時に顔を上げた。

以下略 AAS



17: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:33:21.10 ID:mXNAEsvV0

「それじゃあ次は、僕がプロデューサーらしい指導をしないとな」

言いながら僕は千早の前に鏡を置いた。
小さく手を叩いた後で、「はい、笑顔!」と声をかける。
以下略 AAS



18: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:34:20.47 ID:mXNAEsvV0

「……不気味ですね」

彼女の自己評価は正しい。

以下略 AAS



19: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:35:39.39 ID:mXNAEsvV0

だから、僕はこう返した。「なんだ、だったら大丈夫」と。

「忘れてる事なら思い出せる、知らないなら教わることもできる」

以下略 AAS



20: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2019/03/10(日) 00:36:16.69 ID:mXNAEsvV0
===
以上おしまい。

お読みいただきありがとうございました


21: ◆Xz5sQ/W/66[sage]
2019/03/10(日) 00:46:36.22 ID:mXNAEsvV0
訂正>>11

〇とはいえ、応援しても二人の実力差は歴然。
×とはいえ、応援しても二人の実力差は歴戦。


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