11: ◆x8ozAX/AOWSO[saga]
2019/04/05(金) 17:32:08.40 ID:iywvaqaG0
  
  
  結局、なんだったんだろう。 
  
  帰ってしまったものは仕方ない、取り敢えず俺も帰る支度をしよう。 
  ガスの元栓チェックして、窓の鍵をチェックして。 
  そう言えばポットも電源つけっぱなしだろうな。 
  きちんと中の水も捨てておかないと…… 
  
 「……ん」 
  
  ポットの中には、結構な量のお湯が残っていた。 
  あいつ、何杯コーヒー飲むつもりだったんだ。 
  カフェインどれだけ摂るつもりだ。 
  そこまでして起きて、何をするつもりだったんだ? 
   
 「まぁ、良いか」 
  
  中の残りを捨てる時、湯気のせいでよく見えずお湯が指にかかって火傷しかけた。 
  今日は一日、水難だ。 
  窓の外は未だ小雨だが降っている。 
  帰るのが多少億劫になる。 
  
 「……まだ、帰ってないのか」 
  
  窓の下、事務所の前。 
  先程見た色の傘が、そこに広がっていた。 
  待っていてくれているのだろうか。 
  だとしたら、本当に…… 
  
 「まったく、これで俺がまだ帰らなかったらどうするつもりだったんだ」 
  
  どうせそれも、読まれているんだろう。 
  俺が直ぐに帰る事くらい。 
  電気を消せば、事務所の中は真っ暗になる。 
  外は夜と雨で、遠くのものは何も見えない。 
  
  だからこそ、雨の中に咲く傘の花は、やけに綺麗に見えた。 
  
  
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