男「明日死ぬ彼女に向けて」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/11(火) 12:28:02.87 ID:8Kxlpx7EO
「どんなすごいひとになりたい?」

 僕よりほんの少し、具体的な考え方。ふわふわを、ほんの少しハッキリとさせる思考法。
 思えば、子供のわりに、彼女は大人なびていた気がする。

「しあわせにできるひと!」
「どうやってしあわせにするの?」
「なんとかする!」

 ひどい答えだった。

「あはは」と彼女は笑った。

「ねえいま、きみはしあわせなの?」

 と僕は聞く。

 君、キミ、きみ。恥ずかしがって、僕らはお互いの名前をあまりよばなかったっけ?
 彼女はとても幸せそうに笑っていた。

「もちろん。キミはどう?」

 小さかった頃の僕は、幸せそうに笑っているきみを見ていた。それで。

「しあわせだ!」


 わけもわからず、そう叫んだ。
 それは、まやかしや、ごまかしに近いのかもしれない。風邪がうつるように、つられて笑っていただけかもしれない。
 単純だった。でもそれが悪いことだというわけではなかった。

 そうやってきみの笑顔を見て。単純にいい気分になって。
 人の笑顔を見ると、自分も楽しいんだなあ、と思って。
 子供、だった。

 そんなあやふやな状態で、いろんなことを思った。
 すごいひとになりたいと思った。すごい人とは誰かを幸せにできる人だった。笑顔は幸せの象徴だと、信じた。

「きみはなんでわらってるの?」と僕は問いかける。
「しあわせだからだよ」
「ほんとうに?」
「ほんとうに」

 だから。
 ふわふわとした考えは少しずつ形を作っていった。いまだにそれは曖昧だった。
 それは、僕の基盤となった。


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