男「明日死ぬ彼女に向けて」
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3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/06/11(火) 12:28:41.79 ID:8Kxlpx7EO



「いいことをするのは本当にいいことなの?」
「どうしたの急に」

 大きくなっても、僕らは結構な頻度で会っていた。周りにそんな関係を笑われたりもした。だから表ではあまり関わらなくなった。だからといって、彼女と一緒の時を過ごさなかったわけではない。
 秘密の場所があった。子供のころからの、ふと寄ってみれば彼女か、僕がいる、そんな場所。
 中学に上がった時も、それは続いていた。

「なんだか……わからなくなってきちゃってさ」
「いいことをすることが?」
「そんな感じ」
「そんなに深く考えなくてもいいんじゃない?」
「どうして?」
「……」
「じゃあ、宿題ね」
「えー」

 もともと、僕はそこまで、物事を深く考えるほうでは、なかった気がする。複雑で無意味な考え事は、彼女の受け売りで、彼女が答えを求めるから、僕も答えていた。最初はどうだってよかった。だが、だんだんと、影響された。

 鳥はなぜ飛ぶ? 人はなぜ生きる? 私たちの目指す形は何?

 互いに疑問と主張をぶつけ合った。話のタネが欲しかっただけなのかもしれない。僕らの間に何があるかなんて、点でわかっちゃいなかった。だから、理由のような、言い訳のような、何かを、手放さないためにそういう話をしていたのかもしれない。

「考えてきたよ」
「ほお」
「僕は結果、、が大事だともう」
「どうして?」
「みんなが幸せなら、なにも問題ないでしょ?」

 僕は熱弁した。
 例えば、嘘をついて、ある人を幸せにしたとしよう。それで結果がよかったから、めでたしめでたし、で終わるのは問題ない……わけではない。嘘をつけば嘘をついた人が不幸かもしれない。嘘をつきとおせる保証もない。だから清廉潔白に、できる限り王道で良い結果をだす。それがいいこと、だよ。
 そんなことを言った。

 この答えには穴がいくつもあった。実際に、それができない時はどうするかは想定されていない。
 だがひとまずこれは正しい答えだとは思っていた。これに当てはまらないものは、またべつの時に考える。問題を細かく砕いて、最初の土台を作る。これは、物語でいえば序章のようなものだ。



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