“らしくない私たち” に 祝福と喝采を
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17:名無しNIPPER[saga]
2019/07/01(月) 23:50:51.48 ID:j/IZGaDe0

「私がアイドルになったばかりの頃は、それはもう酷かったわ。愛想は悪いし、トークは下手だし、笑顔一つだって満足にできなくて。そのくせ妙なプライドだけは一人前で」

「水着の撮影が気に食わなくてカメラマンを睨み付けて帰らせてしまった事もあったし、歌の出来栄えに納得できなくて思い切り駄々をこねた事もあったわ。『私が納得いくまでスタジオの使用時間を延長してください、叩かれたって動きません』って」

「あと、前座のくせに『私の方が上手い』って、メインのバンド以上に会場を沸かせた事もあったかしら──あ、でも出来映え自体は完璧だったし、私の方が上手かったの。全部が全部ダメだったという訳ではない……と思う。だけど、前座としては失格よね」

「みんなにもプロデューサーにも、いっぱい迷惑をかけてしまった。貴女と一緒よ──いいえ、かけた回数では貴女よりも断然上ね。前座の件なんて、社長まで謝りに行ってくれたらしいの。でもそんな素振りは全然見せなくて……本当に、優しい人達ばっかり」

 そんなの知らなかった。
だって、今の千早さんからは想像できないもん。
優しくて、レッスンだってキビしいけど後でしっかり丁寧に教えてくれて。でもステージに上がれば、スゴい歌で客席みんなを夢中にさせる。

 でも、そんなスゴい人なのに……私なんかのために、昔の自分の失敗を教えてまで励ましてくれてる。

「それでも私がこうしてアイドルでいられるのは、みんなのおかげなの。失敗しても、その度にみんなが手を引っ張ってくれたおかげ」

「だから、貴女も二度や三度の失敗くらいで、あきらめたりなんかしないで。そうすればきっと、失敗してへこんだ気持ち以上に、もっと凄い景色を見られるはずだから。経験者の私が言うんだもの、間違いないわ」

──ね? だから大丈夫。きゅって少し力のこもった千早さんの腕が、そう言ってる気がした。



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