18: ◆J2O9OeW68.[sage saga]
2019/07/24(水) 12:33:55.17 ID:rmJoFnhWo
  
 「海」 
  
  降り始めたばかりの雨みたいに静かな声だった。 
  
 「水溜まりや湖なんかでもいいかもしれないけれど、でも、それだと青空の広大さと些か釣り合いがとれない。 
 空の巨大な水色をそのまま水に投影できる何かなんて、きっとそれほど多くはない。 
 そして、真っ先に思いついたのが海だ」 
  
  海の色は空の色だから、と彼女は言った。 
  
  彼女の両目は未だ閉じたままでいる。 
  風はもう止んだのに、まるで何かが過ぎ去るのを待っているみたいだった。 
  そんな彼女の隣で私は、もしかしたら、と考える。 
  
  ――もしかしたら、プロデューサーさんもわたしと同じ景色をみているのかもしれない。 
  
  そんなわけがない。 
  私たちは、たとえばこの青空でさえ、同じようにみることなんてできやしない。 
  私の世界と彼女の世界とで、全く一緒の形をしたものなんて多分一つもない。 
  
  だけど。 
  
  
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